WPC EXPO 2001見物記
 2001年9月中旬に行われた「アジア最大のPC展示会」の見物記です。

序.幕張本郷臨時バス停
1.一番目立ったもの
2.Bフレッツなど
3.これもIT?
4.IT(情報技術)をどう生かすか

 
 
序.幕張本郷臨時バス停

 行く直前に公式サイトを見たところ、開催期間中は幕張本郷駅とメッセの間を臨時直通バスが走る、とのことだった。定期バスの幕張メッセバス停は、降りてから歩道橋をちょっと歩いてやっとメッセの東端に着く、という感じでちょっと不便だ。それに対して直通バスは正面入り口に着くので入りやすい。もちろん、途中の停車もない。
 したがって直通バスを利用することにした。同じところに行くのだから、定期バスと同じバス停を使うのだろうと思ってそこに行く。ちょうどギュウギュウ詰めの定期バスが発車するところだった。「これには乗らずに次の直通バスに乗ろう」と思ってしばらく待つが、それらしいものは来ない。
 嫁さんに「直通バスはバスターミナルの向こう側から出るのでは?」と指摘されたが「こんな大きいイベントだし、定期バスのバス停には余裕があるから、同じ所にくるはずだ」と否定した。しかし、次に来た定期バスの運転手はマイクで「メッセにお越しの方は、向こう側から直通バスが出ているので、そちらもご利用ください」とアナウンスをしたのだった。
 そこで、臨時バス発着所に行ったら、直通バスが止まっていた。車内はガラガラである。しかも、なぜかそこに京成バスの職員が暇そうに座って運転手と話しているのだ。雑談している暇があるのなら、定期バスの発着所に「直通バスは向こう側」とでも紙に書いて表示すればいいのに、と思った。
 そして、直通バスはガラガラのまま発車した。発車する直前には、ギュウギュウ詰めの定期バスが脇を通っていたのが印象的だった。

 
1.一番目立ったもの

 今回の「WPC EXPO 2001」において、最も存在感のあったものは、一般的にはWindowsXPだった、とされている。確かに会場で配られる袋には「WindowsXP」のロゴが書かれていた。また、マイクロソフトのブースでも大々的にWindowsXPのデモが行われていた。
 実際に筆者も一度ならずマイクロソフトのブースに行ってWindowsXPを見てきた。しかし、どうも強い印象は残らなかった。
 現在、筆者は自宅ではWindows98を、職場ではWindows2000を使っている。しかし、パッと見ただけでは、一部のロゴを除いて両者の違いは判らない。もちろん、安定性の差など、いろいろなところでWindows2000の利点は感じる。しかし、それを実感できるのは使い込んでいるときのみだ。
 WindowsXPの最大の特徴はNT系と9x系の統合なのだろうが、これがうたわれてから2年以上の時間が経過している。したがってあまり新鮮味がない。パソコンで使う範囲での最大の売りである、「NT系の安定性・堅牢性を持ちながら、ゲームなどの9x系用のソフトが使える」も、実際に使ってみないことには判らない。要はいくら展示を見てもピンとこないのだ。
 筆者の見たデモは、DVカメラで動画を取り込み、それをWindowsXP付属の動画編集ソフトで編集する」というものだった。確かにOSに動画編集ソフトが付属でつくなんて、数年前には想像できなかっただろうが、今となっては別に驚くほどではない。しかも、説明してくれた人いわく「本格的な編集は専門のソフトを使わなければできないが、これでも相当な事ができます」とのことである。
 いずれにせよ、「WindowsXPでないとできない」というわけではない。他にも「他人のPCをリモートコントロールできる」というデモもあったが、これも、ソフトを使えば以前よりできた機能である。そこそこ時間を費やしたが、結局のところ一部のアイコンが変わったことくらいしか印象には残らなかった。

 前置きが長くなったが、「では一番目立ったのは何か」となると、その答えは佐川キティである。
 要は「キティちゃん」に佐川急便の運転手の制服を着せたものなのだが、佐川急便のブースはもちろん、一部の出入口にも大量に飾られていた。しかも飾ってある量が半端でなく、場所によっては所狭しとギッシリ詰め込まれているのだ。
 同行した嫁さんが欲しがったので、様子を見ていたら、佐川ブースでのステージを見てアンケートに答えるともれなくもらえる、という事がわかった。そこで適当な時間を見計らって佐川のブースに行ったところ、ステージ開始まで30分近くあるのに、席はほとんど埋まっている。そこで嫁さんは席を取り、筆者は他のブースをうろついていた。
 佐川の開演10分くらい前にもどると、満席となった会場の脇に行列ができている。何だと思ってコンパニオンに尋ねたら「アンケート用紙をもらうための列」である事がわかった。並んでいるのは女性よりむしろビジネスマン風の人のほうが多い。とはいえ、彼らがITを活用した物流の研究に熱心そう、という雰囲気はなかった。おそらくは彼女や会社の女性に頼まれたのだろう。
 大盛況で佐川のステージは終わった。後で嫁さんに内容を聞いたところ、近いうちに現金による代引きのみならず、カード決済や分割払いなども佐川のドライバーができるようになる、というようなものだったようだ。確かに便利で興味深い技術だ。筆者も仕事で宅配業者を使う事もあるので、佐川によくある荷物の延着・不着・破損などの問題が解決されたら、これらの新サービスを活用しようかと思った。
 
 
2.Bフレッツなど

 すでに都内では商用化されているとはいえ、Bフレッツを体験する機会はなかなかない。今回はそれも楽しみの一つにしていた。
 NTT東日本のブースに行くと、ステージ前に10台ほどBフレッツの体験できるパソコンがあった。予想外に空いていたのでちょっと驚いたが、おそらく多くの人は会社などで10Mbpsを超える速度で接続するのに慣れているのだろう。
 いざデモ機にさわってみると、キーボードがなかった。これでは普段見ているサイトと比較することができないので、ちょっと拍子抜けした。Bフレッツデモ用(?)のページしか見れないのだ。
 確かにクリックするたびに一瞬で次のページが出るのはすごかったが、普段見ないページだとどうもピンとこない。あと、動画も見たのだが、これもBフレッツ用ではないようで、特に新鮮さはなかった。やはり、パソコンの全画面で鮮明な画像が表示されないと、「広帯域」という感じがしない。

 その後、今度はNECの無線インターネットのブースに行った。こちらは、15分間無線によるインターネットを自由に使える上にコーヒーまでサービスしてくれる。こちらもさほど待たずに入れた。
 無線といってもカウンターに座ってノートパソコンを使うので、あまり「無線」という実感はない。しかも、回線速度は2Mbpsくらい出ており、我が家の冴えないADSLよりずっと速いので、逆に無線らしさを感じることができなかった。
 ついでと言ってはなんだが、某無料プロバイダのブースにも行ってみた。そこではアナログ接続でのデモをやっていたのだが、余りの遅さに別世界に来たかのようだった。


 
 
3.これもIT?

 World PC Expo と言うだけあって、当然ながら、展示のほとんどがPC・携帯などを利用した「IT技術」である。しかし、その中で「何でこんなところに?」と驚かされたのがいくつかあったので紹介したい。
 まずは、イベントホールで開催されていたコントである。イベントホールはメインの展示場とは別棟になっている。一応、抽選会場にもなっているので、そのあたりは行列ができているが、あとはMAC中心という事もあり、すいている。
 その一番奥まったところにステージが作られているのだが、筆者がイベントホールに来たときはそこで「ザ・ニュースペーパー」のコントをやっていた。
 面白いかどうかは見る人の好みにもよるだろうから、ここでは論じないが、別にITをネタにしたわけでもなく、「一体なぜここで・・・」という違和感はぬぐえなかった。

 同じイベントホールの入口周辺では、なぜか仙台の名産販売コーナーがあった。なんでも仙台でやっている「デジタル寺子屋」なるものが出展するので、一緒に出店したようだった。
 笹かまぼこは個人的に大好きなので、食べることができたのは嬉しかったが、これもまた「ここで笹かまぼこを売る意味は?」と不思議に思わざるを得なかった。

 そしてメインの展示場に戻って、再びブラブラしていると、休憩所みたいな所があった。よく見ると、ワインの試飲即売会をやっている。座ってみたら、何種類かのワインを試飲させてもらった後、熱烈な売込みを受けた。
 売り込むのはいいのだが、価格も送料もなんら説明がない。店についての具体的な説明もこちらが求めないとしてくれない。後で調べたところ、「ネットショップをやっている店がリアルに出店」と書いてあった。ネット販売において不安視されている「信頼性の不安」をPRするにはいい販売方法だとは思った。
 せめて、オンラインショップのトップページくらいは展示してくれないと、こちらとしては「PC EXPOに何か勘違いしたワイン屋がまぎれこんだ」と誤解しかねない。

 
 
4.IT(情報技術)をどう生かすか

 というわけで、半日ほど会場を巡ってきた。いろいろと興味深い製品やサービスを見ることができ、有意義な時間を過ごせた。
 その一方で、「技術が進歩したのはいいが、もっと基本的な所で改善の余地があるのでは?」とも思う事例がいくつかあった。「IT(情報技術」を筆者なりに定義すると「情報を効率的に伝達・活用する技術」だと思う。あくまでも主は「情報」であり、「技術」は情報を生かすための手段のはずである。
 たとえば冒頭に書いた臨時バスの発着所。「別のバス停から臨時直通バスを走らせる」という「情報」を利用者に伝達するには、「IT」などを使うまでもなく、看板一つ置いておけば事足りる。それを怠った結果、すし詰めの定期バスを横目にガラガラの直通バスが走るというハメになってしまった。
 他にも、最新技術を取り入れるのはいいが、肝心の荷物の扱いの不評が相変わらずの佐川。わざわざ出店したにもかかわらず、ITとの連携が伝わってこなかったワイン屋。これらの状況を見ると、伝えられるべき「情報」に見合った「技術」がうまく適用されていないのではないのか、と感じた。
 現在「IT」は、数ヶ月前の予想と違って行き詰まりつつある。その原因の一つに、この「求められる情報」と「技術の進歩」のズレがあるのではないか、と思った次第である。





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