ネット時代における報道について
戻る
 
2.オンライン株取引とその紹介について

 10月からインターネット上での株取引がより手軽にできるようになったらしい。そのため、いくつかのインターネット雑誌ではページ数を割いて、「インターネット株取引」の解説をしていた。
 いまさら言うまでもないことだが、どんな取引でも、オンラインでできるというのは非常に便利な事である。家から一歩も出る必要もないし、好きな時間に取引ができるからだ。さらに10月からは手数料が安くなったとの事である。つまりはそれだけ敷居が低くなった、という事だろう。
 しかし、だからと言って、「オンライン株取引の手数料が安くなった。これからは自宅で気軽にオンライントレーディングだ」などと書いて、雑誌が気軽に取引の方法を紹介する、というのはいかがなものだろうか。
 筆者が読んだ雑誌の一つでは、わざわざ漫画までつけて「主婦が自宅で株取引」という形での説明記事を載せていた。いかにも「誰でも気軽にできるもの」というイメージを持たせよう、という意思が明白である。
 まず申し込み手続きなどを行い、続いて「郵便局で定期預金を解約して口座を開設」し、ログイン後に「数量100株・2350円の指値を指定」した、と書かれている。意識的に具体的な金額の表示を避けているようだが、要は「定期預金を解約して235,000円を株に突っ込んだ」という意味である。
 以下の展開は次号に続くので、この記事を書いた人が儲けたか損したかは記事では解らない。しかし、ちょっと考えれば解ることだが、この2350円で買った株が、2350円より安くならない、という保証はどこにもないのだ。
 普通、このテの財テクに関する記事だと、「記事中の取り引きは必ずしも元本が保証されるものではない」というような感じの注意書きが欄外に小さく出るとしたものだが、それすらないのだ。もちろん、この記事を読んだ読者がオンライントレーディングを実際に行って失敗しても、この雑誌社が責任を取る必要はない。とはいえ、読者への情報提供、という意味ではやや不十分ではないだろうか?

 新技術をとりあえず普及するためには、確かにいい面だけを宣伝したほうがいいのだろう。しかし、マイナス面に関する情報も明確に開示したほうが、広く定着させるには、有効なのではないだろうか。
 Webを利用した商行為の利点は「自宅にいながらにしてキャッシュレスで取り引きができる」という事である。ただ、これは反面「ネットサーフィンをするような感覚で大金を浪費してしまう」というマイナス面を誘発する恐れがある。
 もしこれで破産者でも出たら、それこそ「ネット破産」みたいな言葉が生まれ、インターネットでの経済行為そのものに悪印象を持たれかねない。そのような事を防ぐためにも、むしろインターネット雑誌などは積極的に、危険性の存在とそれへの対策を読者に伝えるべきではないのだろうか?

戻る

「電算室」に戻る

トップページに戻る