パソコン購入の案内者
   
 
1・謎だらけの世界

 個人でパソコンを買うきっかけ、というのは千差万別だ。しかし、買う時点での購入者の状態、というのは大きく二つに分けることができる。
 まず、パソコンをすでに持っている、もしくは仕事などで使いこなしているなどで、パソコンの機種に関する知識・情報をそなえている場合である。この場合、購入に関しては特に苦労することはない。
 もう一つは、初めてパソコンを購入し、しかも機種に関する知識もあまりない場合だ。こういう状況の人にとって、パソコン購入はちょっとした一大事になる。
 パンフレットを読んでも、意味不明の言葉が羅列されているのみである。最新型は高いから少々レベルを落とそうとしても、どこで妥協していいか解らない。メーカーはどこがいいかとか、どの店で買うといいか、という問題も派生してくる・・・。
 10万円単位の高額な買い物をするというのに、あまりにも情報が取得しづらいのである。そこそこの決意をして予算を組んだのだから、失敗はしたくない。しかし、そのための知識はほとんどない、以上が、94年夏、初のパソコン購入を決意した筆者の状況だった。

 
2・頼るべきは・・・

 幸い、職場にパソコンに詳しい人が一人いた。その人にとりあえず、基礎知識とおすすめのメーカー・機種などを教わろうと思い、尋ねてみた。すると、その人は「じゃあ、一緒に秋葉原に行きますよ。行きつけの店がありますから。で、どんなのを買うのですか?」と言って、購入の段取りまで一気にたててくれた。
 確かにその人とは以前同じ部署で仕事をしていた事もあった。しかし、筆者は氏に特別に何かをした事はない。むしろこれまでも世話になっているのは筆者の方である。もちろん、前々から面倒見のいい人ではあったのだが、あまりの親切さに少々驚いた。しかし、前章で述べたようにその時点でのパソコン購入に関する知識がほとんどない筆者としては渡りに豪華客船である。ありがたくお世話になる事にした。
 さて当日、秋葉原で待ち合わせて氏の行き付けの店へ。なんと店員とは顔なじみだった。ラーメン屋や喫茶店なら顔なじみの店員がいても不思議でもなんでもないが、パソコンショップなのである。相当買わねば普通顔なじみなんかにならない。おそらく、筆者以外の人にも相当パソコン購入を斡旋していたのだろう。そして氏は、その店員さん相手に慣れた口調で本体と周辺機器を決め、値引き交渉までやってくれた。筆者が後ろで突っ立っているだけで希望するパソコンを予算の範囲内で購入できたのである。
 このままではこちらの寝覚めが悪いので、その日の夕食だけはおごらせていただいた。結局、それが私の氏に対する唯一の「報酬」だった。その後、氏がこの件で筆者に恩を着せるような言動を取ることは一瞬たりともなかった。その後一度HDが壊れた時も相談にのってもらった。


 
3・立場が変わって

 
 パソコンを買ったとはいえ、筆者自身はただアプリケーションを使っているだけで、技術的なことは弟に任せっぱなしだった。しかし、97年秋に転居し、自分でやらざるをえなくなった。それが転機となり、必要最小限の事はもちろん、それ以上の事にも興味をもち、情報を集めるようになった。。
 時を同じくして職場の人がパソコンを買う事になった。その購入の手配は別の人がやったが、つきあいと個人的興味のため、一緒に店まで言って少しは助言などもした。また、利用しているBBSに買い替えについての話題が出た時に、自分の経験を書き込んだりもした。

 そしてついに筆者にパソコン購入の相談する人が現れた。初めての事なので、メーカー情報からはじめ、いろいろ情報を集めた。やっているうちにこれがとても面白い、という事に気づいた。
 主な用途を依頼者に確認して、それに応じた機種を決め、周辺機器を選定し、メモリやHDの容量を決める。自分で使いもしないのにそれのどこが楽しいのか、と言われると明確な解答はできないのだが、とにかく楽しいのである。
 そしてその時初めて、私の恩人が5年前にしてくれた行為のエネルギー源を理解することができたのであった。





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