なんでもゴルゴムの仕業にする南光太郎、しかも力強く

　当時、「仮面ライダーBLACK」という番組が放映されていた。見たことはないのだが、そこに出てくる悪の秘密結社「ゴルゴム」はマグロ泥棒なども手がける集団だったそうだ。
　それだけでも奇妙だが、対する主人公でBLACKに変身する南光太郎は、そのニュースを聞くやいなや「ゴルゴムの仕業だ！」と断言したそうだ。マグロを盗む秘密結社も秘密結社だが、それを即座に断言する主人公も主人公である。
　そのような主人公の精神構造をギャグにしたのが本作である。
　まず、一コマ目で南光太郎が「大量のマグロが何物かに盗まれた。ゴルゴムの仕業だー！」と叫ぶ。
　続いて、「光GENJIの山本くんは、書道八段のくせに字がへたくそだー！　ゴルゴムの仕業だ！」と叫ぶ。
　さらに三コマ目では、「げー！また仁藤優子の声が裏返ったー！ゴルゴムの仕業だ！」と叫ぶ。
　四コマ目のオチは、掲載誌の編集ミスをネタにしたもので、別に南光太郎も叫ばない。

　ただ、これだけの四コマだが、あまりに印象が強く、筆者のような「仮面ライダーBLACK」を知らない人にも強く印象が残った。ちなみに筆者は、当時大人気だった「光GENJI」は知っていても、「山本くん」が誰だか知らなかったし、仁藤優子さんなる女優さんについても存在は知らなかった。
　つまり、オチの編集ミス以外は何一つ元ネタが分からないわけである。しかも、作者の嵐馬氏は、本作並びに翌月発表した魁！宝竜黒蓮珠で一気にファンロードを代表する作家になったが、この時点では全く無名の存在だった。つまり、この時点ではブランドもなかったわけだ。にも関わらず、その時点でこの作品は忘れられないものになった。

　さて、本作が発表されてから21年経った2009年6月に仁藤優子さんが結婚した。その間、筆者は彼女が出ている番組も、彼女の関する報道を一切見たことはなかった。当然、彼女の存在を意識したことなど一瞬たりともなかった。
　ところが、この結婚報道を見た瞬間、「げー！また仁藤優子の声が裏返ったー！ゴルゴムの仕業だ！」という台詞が頭の中に自然と浮かんだのだ。
　発表されてから21年経っても、心の中に焼き付いており、「仁藤優子」という名前に自動的に反応したわけだ。改めてこの作品の凄さと、作者の力量の高さに驚かされた。