魁!宝竜黒蓮珠!(嵐馬破天荒氏)

1999/01/13

掲載・ファンロード1988年5月号
 「超絶したセンス」というものに驚嘆させられた作品。
 宮下あきら氏の「魁!男塾」の格闘大会に宝竜黒蓮珠という暗殺集団が出てくる。彼らの珍技を見た人なら誰でも「こんな技で暗殺なぞできるわけない」と笑うだろう。しかし、その珍技を見て笑うのと、その珍技をもとにパロディを描いて他人を笑死させるのには雲泥の差がある。
 この作品のすごい所は、まずキャラクター達の正確な描写であろう。黒蓮珠の面々がもしアメリカ大統領を暗殺しようとして出現したらどうなるか、という場面を、意図的なデフォルメなしに描写している。
 その客観的な描写から爆笑を引き出すのが、大統領・護衛官・観衆のセリフである。黒蓮珠の面々のあやしさを、これでもか、という感じで語っているのだ。「あ・・・あやしいー!」を筆頭に、こんな目立った蓮中が暗殺などできるわけがない、という事を傍観的なセリフで表現している。その最たるものは「こんなにあからさまにあやしい奴はアメリカ建国以来始めてだー!撃て撃て全弾撃ち尽くせー!」だろう。
 パロディには原作の設定のみを生かして自分独特のキャラを作ってしまう場合と、原作での設定を的確に流用してしまう場合があるが、嵐馬氏は後者の手法を用いる天才だったと言える。


「心に残った名作」

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