銚子電鉄

2012/4/1

 幻の木原線ルートで房総半島を横断した後、外房線・東金線・総武本線を経由して銚子に向かった。
 先程、久留里線に乗ったため、この時点で、千葉県を通る鉄道で乗っていない区間は、銚子電鉄の犬吠−外川間となっていた。
 以前行ったのは、20年近く前だった。その時は、千葉県の鉄道完乗など考えてもいなかった。そのため、終点の外川駅の一つ手前にある犬吠駅で降り、犬吠埼を見物してそのまま銚子に戻った。
 その後、千葉に住むようになり、休みを利用して近所の鉄道を乗っているうちに、気がついたら未乗区間が久留里線と犬吠−外川間だけになっていた、という次第である。

 というわけで、総武本線で銚子駅に向かった。着いたホームの先端が、そのまま銚子電鉄のホームとなっている。そして間には小さい建物があり、それが総武本線との境界みたいな役割となっている。
 そして、総武本線の線路はそのまま伸びており、駅の先で銚子電鉄と合流している。そして、境界と思しき建物の脇にも、8両編成が来た時の乗車位置表示があった。それを見た時は、両鉄道の境界点はどこなのだろうか、などと思った。
 そうこうしているうちに、銚子電鉄の車両がやってきた。単行で、かつての営団丸ノ内線と同じ塗色だった。扉も昔の営団地下鉄仕様だ。中を見たところ「丸ノ内線支線で使用していた」旨が書かれていた。
銚子電鉄・元丸ノ内線車両
(※クリックすると同じ窓で大きな画像が開きます。)
 車内には料金案内が掲載されている。犬吠・外川までは片道310円で、単に犬吠もしくは外川まで往復場合は540円と割引し、全線のフリーきっぷは620円にするなど、細かく設定されていた。
 一両の列車だが、運転手の他に車掌も乗っていた。ただし、ドア扱いや駅での発車ベルなどは運転手の担当で、車掌は切符販売と駅の案内、という役割分担だった。そして、途中の駅で車掌は降り、すれ違った銚子行きに乗り込んでいた。
 電車は、林とキャベツ畑の中を進む。軌道には雑草が生えていた。こちらも、いすみ鉄道同様、経営危機でよくニュースになっている。それだけに、軌道を除草する余裕もないのだろう。
 そして、関東最東端の駅である海鹿島駅を過ぎて電車は右にカーブする。このあたりから、少し海が見えるようになった。そして、君ヶ浜駅を経て、犬吠駅に着いた。いよいよこれから、千葉県内の鉄道完乗となる。しかし、発車したらすぐに外川駅に着いてしまった。したがって、個人的な感慨みたいなものは特になかった。

 外川駅から、近くにある「地球が丸く見える丘展望館」に向かう。このあたりは、関東平野の東端が太平洋の中に付き出した半島の先端、という場所にある。そのため、高いところから見れば、周囲の半分以上が海になり、水平線が丸く見える。
 その事を大変分かりやすく表現した名前を持つのが、この展望館である。
 外川駅を出て、ゆるい上り坂を進む。周囲は、銚子電鉄の沿線同様、一面キャベツ畑だ。いろいろと畑を見たことがあるが、ここまで同じ作物ばかり植わっているのはあまり見たことがない。ここの気候はよほどキャベツ栽培に適している、という事なのだろうか。
 しばらく歩くと、それらしい建物が見えた。ただ、そこに行く道がどれなのだかよく分からない。少々迷った末、展望館の入口にたどり着いた。
 入館料350円を払い、屋上にある展望台に行く。中央部に台があり、そこに登り、海を見る。その場で一回りするが、確かに視界のほとんどから水平線が見える。そして、水平線が弧を描いてつながっており、文字通り「地球が丸く見える展望台」だった。
展望台からの動画(※クリックすると、同じ窓で動画が開きます。サイズが大きいので、一度保存してから開く事をお勧めします)
 ひと通り、地球の丸さを体感した後、今度は犬吠駅に向かって坂を降りた。途中、何度か観光バスを見かけた。道路は一応二車線だが、カーブが多く、離合するのは大変だ。観光バス同士のすれ違いの時などは、坂道をバックして場所を調整するなど、かなり大変そうだった。
 観光バス用に、展望館への上り順路と下り順路をそれぞれ設定すれば、このような事はなくなると思うのだが、やはり難しいのだろうか。
 そして、犬吠駅のところで踏切を渡り、海岸に向かう。目的は、太平洋を見ながら入れる露天風呂がある犬吠崎温泉だ。

 いくつか候補があったが、元祖をうたっているホテルにした。宣伝写真などを見ると、あたかも海辺にあるようだが、実際には海岸からかなり離れていた。
 さらに、露天風呂の柵が視界を塞ぎ、折角の太平洋を一望することができない。幸い、他に入っている人がいなかったので、風呂の中くまなく歩き、柵に邪魔されずに太平洋が見える場所をみつけた。
 都合のいい事に、そこは岩風呂でできた椅子みたいになっており、下半身だけ湯に浸る形になる。そのため、かなり長時間いてものぼせない。
 その「特等席」に座り、ぼーっとしながら、太平洋と、岩で砕ける波しぶきを見続けていた。見ていると、色々な事が頭の中に浮かんだり消えたりする。しかし、何を考えていても、目に入るのは、ひたすら広がる太平洋と岩で砕ける波しぶきだけだ。
 そうこうしているうちに、帰りの電車が出る時刻になったので、犬吠駅に戻った。そして、駅でお土産の「ぬれせんべい」を買い、電車に乗った。
 今度の電車は二両編成で、前方は「湘南型」の昔懐かしい流線型、後方は貫通型だ。後方の運転台を見て、元京王電鉄の車両だと分かった。
 乗ってみると、車両が銚子に来た時の写真が貼ってあった。それによると、この電車は京王電鉄で使われた後、松山の伊予鉄道に売却され、さらにそこから銚子に来たとの事だった。つまり、二度海を渡ったわけだ。
 この型の車両は京王沿線にある大学に通っていた時に乗っていた。さらに、相方の帰省につきあって松山に行った時も乗っている。そして今回、銚子でまた乗ったわけだ。実際に同じ車両かどうかはもちろん分からない。とはいえ、同じ形式の車両に三箇所で乗った、というのは面白いと思った。
銚子電鉄・元京王・伊予鉄車両
(※クリックすると同じ窓で大きな画像が開きます。)
 そして、銚子に戻る。それから20分ほど待って成田線に乗る。途中まで、遠くに利根川が見えるが、河口に近いだけあって、海のようにも見えた。
 そのうち、早起きの疲れで眠くなり、気がついたら終点の千葉駅に着いていた。