浜田川にかかる謎の橋

2008/1/4

 浜田川という川がある。この川は、京葉道路幕張SA周辺の荒れ野原を流れた後、暗渠となって地下に潜る。その先には、広大な面積を持つ幕張電車区があるからだろう。何本も線路がある電車区に橋をかけるくらなら、川のほうを埋めてしまったほうが安上がり、という判断によるものと思われる。
 そして浜田川は、電車区を過ぎて数百メートルのところで地上に再び姿を現し、国道14号を越えて美浜区に入り、新都心ビル街やマリンスタジアムの脇を流れて東京湾に注いでいる。
 幕張電車区を越える前と後や、住宅街を流れている時と新都心地区に入った時など、短い距離の間にいくつもの顔を見せる、なかなか面白い川である。
 この浜田川に関して、ある方から「取材依頼メール」をいただいた。なんでも、幕張電車区を越えて、地上に出た直後にある橋に、奇妙な札がかかっている、という事だった。

 というわけで、浜田川が地上に出る所に行ってみた。何の変哲もない住宅街から突如姿を現した浜田川に、数十メートルすると、最初の橋が架かる。名前は「上八坂橋」との事だ。端から見ると、何の変哲もない橋だ。
 ところが、橋を渡ってみると、メールにあった通り、欄干に奇妙な札が下がっている事に気づいた。
※画像をクリックすると、同じ窓に大きい画像が表示されます。
上八坂橋・その1
 金属板に二色刷で印刷された札だから、本当に千葉市が作成したものなのだろう。しかし、橋および、川面を見ても、「水路敷地にあって、水路管理上支障があるので、至急移動すべき物件」などはどこにも存在しない。

 さらに百メートルほど下流に進むと、形状・幅とも、うり二つの橋がある。名前は「中八坂橋」だ。この橋にも同じ場所に同様の看板がかかっている。下の写真は、その中八坂橋から、先ほどの上八坂橋に向かって撮ったものだ。
上八坂橋・その1
 ご覧の通り、二つの橋の間の川面にも、何ら「物件」など存在しない。強いてあげるなら、この川の上にかかっている橋くらいしかない。
 とはいえ、これらの橋が不法建築物件であるとも考えにくい。路面といい、欄干と言い、銘板といい、どう見ても、普通に市もしくは県がかけた橋だ。こんな堂々たる不法物件が存在するとは思えない。だいたい、仮にこの橋が不法物件だったとして、一個人・法人が撤去できるようなものではないだろう。

 おそらく、かつてこの両橋の間に、廃棄船か何かが不法投棄されていたのだろう。この事は、上八坂橋の札が欄干の下流に向けて掲示され、中八坂橋のそれは上流に向けて掲示されている事からも想像できる。
 その後、所有者が従ったのか、別の人が回収したのか分からないが、「不法物件」は撤去されたのだろう。しかしながら、市が確認を怠っており、その結果、このような「どう見ても橋の撤去をうながしているとしか思えない札」だけが残った、というのが筆者の想像した結論だ。いずれにしても、奇妙な光景である事には間違いない。
 わざわざ、「取材」に行った甲斐があった。メールをいただいた方には、この場を借りてお礼を申し上げたい。
 ちなみに、この橋は、幕張本郷駅から業務用スーパー・ワイズマートのある通りをそのままずっとまっすぐ歩き、道幅が狭まってから二番目の角を左折すると見る事ができる。

 なお、冒頭に書いたように、浜田川は短い流域の中で、さまざまな表情を見せる面白い川である。その全貌については、ベイタウン旅行倶楽部というサイトに浜田川を遡る旅という記事に、源流から河口までが写真付きで紹介されている。