荒れ野原

 我がアパートは幕張本郷駅から歩いて5分くらいの線路沿いの所にある。そこから駅と反対方向に住宅街を10分ほど歩くと、角に古びた階段がある。この階段を下ると、いきなり何もない草むらが現れる。
 振り返って見上げれば住宅街が見える。しかし前方はまったくもって何もないのだ。しかも不思議なことに、田んぼが点在している。幕張本郷周辺は畑は多い(参考)が、田んぼはない。しかもこの田んぼ、病気でも発生したのか、穂が出始めたような状態で立ち枯れているのだ。それもいくつか見た田んぼの全てがである。
 そのまま荒地の中の道を進むと、いろいろなものが不法投棄されている。道の真中に畳が二枚ほど捨てられていたりもしていた。しばらく進むと高速道路(京葉道路)にぶつかる。ちょうどパーキングエリアのあるあたりで、従業員の自転車などが止められている。
 そこからしばらく高速道路に沿って歩くと、「キジセンター→」という看板があった。鳥の雉なのだろうかそれとも繊維の生地なのだろうか?いずれにせよ謎な看板である。行ってみようかとも思ったが、指し示された方向の道は「行き止まり」と表示されている上に、見通しのいい荒地にかかわらず、それらしき建物は見当たらない。不気味なので行くのをやめた。
 高速道路をくぐってから右折し、幕張本郷の町のほうに戻る。しばらく歩くと、なんと不法投棄された自動車が縦列駐車していた。当然ナンバーは外され、ガラスも砕かれ、シートなども持ち去られている。一応、千葉市の名前で「廃棄者は片付けてください。またこの車についてご存知の方はご一報ください」という紙が張られていた。
 そのまましばらく歩くと、前方に階段が見えたので上っていった。そこは普通の住宅街だった。ほんの数分前まで荒地を歩いていたのが信じられないほど、風景は異なっていた。
 住宅街と荒地に高低差がそこそこあるのを見ると、大昔は荒地の部分は海だったのかもしれない。いずれにせよ、立ち枯れた田んぼといい、不法投棄された畳や自動車といい、文字通り別世界に降り立ったような感じだった。
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