2006年冬の札幌小旅行

2006/4/1

 学生時代から北海道に行くのが好きで、大学時代に二回長期旅行をした(一回目二回目)。さらに社会人になってからも夏と冬に1回ずつ旅行した。この時点では、最初に行った大学1年の冬から、3年に1回北海道に行っていた。ただ、その後所帯を持った事もあり、行く機会はなかった。
 最後に行ってから8年たった昨年暮れ、無性に北海道に行きたくなった。とはいえ、金も時間もたいしてない。そこで、嫁さんが帰省している土日を使って、超割の航空券を取って一泊旅行をすることにした。しかも、諸事情により、出発は土曜の午後だ。北海道を楽しむにはあまりにも短い時間だが、それでも行きたかったのだ。一種の「禁断症状」みたいなものだったのかもしれない。

安くて広いが、外装がものすごいホテルに泊まる

 というわけで2月末の土曜日に新千歳空港行きの飛行機に乗った。先述したようにこれまで4回北海道に行っているのだが、一番最初は大間からのフェリーで、二度目と三度目は北斗星、四度目は女満別行きの飛行機で北海道入りをしているので、実は千歳から北海道に入るのはこれが初めてだ。青森の小川原湖が下に見えたと思ったら海を渡り始め、再び陸地に着いたときはすでに着陸体勢になっており、ほどなく新千歳空港に着いた。
 そこからエアポート快速で札幌へ。向かいには中国からの観光客が座っていた。持っていたガイドブックが見えたのだが、中国語で小樽の案内などが書いてあった。
 そして札幌駅に降り立つ。これまで、2月の北海道には2回行っているが、当然ながら関東とは寒さの桁が違うはずだ。そこで、マフラー・防寒帽などを用意していたのだが、降り立った札幌駅は意外に暖かく、結局、靴以外は関東と同じ服装で行動した。雪も降っておらず、翌日の天気予報は雨。大学一年の時、国後島の対岸で雨に降られた事があったが、北海道で雨などそれ以来になる。

 この日の宿は、「アパホテル&リゾート<札幌>」という郊外にあるチェーン店である。ここにした理由は、宿泊サイトで札幌市のホテルを安い順に検索したところ、かなり上位にきた、という安直な理由である。カプセルホテルより1,500円ほど高いだけで「リゾート」と名のつくホテルに泊まれるのだから、お得感がある。
 夕方になると、市内の系列店からの無料送迎バスがあるとのこと。それまでの間、サッポロファクトリーを見物するなどして過ごした。そして、中心部にある系列店に行く。久しぶりに見る札幌市電の沿線を歩いていると、電柱に看板があったので、それに従って曲がった。しばらくすると、それと思われる大きな建物が出現した。念のため、名前を確認しようと屋根のほうを見る。すると、確かに「アパホテル」と書いてあった。それはいいのだが、このホテル、屋根になぜか巨大な社長の写真が印刷されている。これを見たときは、この系列店に予約を入れた事をちょっと後悔した。
 そして無料送迎バスに乗って宿泊先に向かった。フロントで鍵と、自動的に加入されるらしい「会員証」をもらう。そして指定された部屋に入ったらなんとツインルームだった。内装もさっぱりしている。観光時期から外れているゆえの「安売り」なのだろうが、これにはかなりのお得感があった。
 部屋はいいのだが、施設自体は「リゾート」という感じではない。「16種類の風呂」がうたい文句の「スパ施設」は、入ったらまず消毒用塩素のにおいが鼻につき、学校のプール授業を思い出してしまった。また、飲食施設もさほどない。繁華街を往復する無料送迎バスが深夜まで出ている事からわかるように、「滞在型リゾート」ではなく、むしろ夜は市内に出るのが普通なのだろう。
 実は、筆者も当初はそうする予定だった。しかし、ちょっとしたミスで体調を崩してしまい、わざわざもう一度出かけ直す気はなくなっていた。
 そこで、ホテル内の居酒屋で夕食にしようとした。ところが、この店、えらく従業員が少なく、入り口に立ってもなかなか人がでてこない。ぱっと見た感じ空席があるのだが、しばらくして出てきた従業員に「現在一時間待ち」と言われた。席があいたら部屋に電話してくれるとの事なので、再度部屋に戻った。
 こういう時の1時間は長い。「やはり無理してでも繁華街に出るんだったか」などと思った頃、ようやく電話が鳴った。早速店に行くが、人手不足は相変わらずで、最初に地ビールを注文したところ、10分くらいして「在庫切れ」という返答がきたほどで、「最初の一杯」を飲むのもままならない状況だった。とにかく、注文を取るまでにかなりの手間が要するのだ。宮沢賢治の小説風に言うと「注文の取れない料理店」とでもなるのだろうか。

17年前の念願がかなう

 このあたりで、すでに後悔しまくっていた。しかし、とにかくメニューを見る。まず付け出し代わりに大根サラダを選び、後は「北海道ならでは」の食べ物を選ぼうとした。その中に、「ほっけの開き焼き」があった。このメニュー自体は、関東でも居酒屋でよく見る。実際、飲みに行ったとき、何度も食べた事があった。そう考えると、一見、「北海道ならでは」ではないと思うだろう。しかし、筆者にとって、「北海道のほっけ」というのは、特別な存在だったのだ。
 冒頭に書いたように、初めて北海道に行ったのは17年前の大学1年の時だった。そのとき、一人で飲みに行ったのだが、偶然隣に座った人と意気投合した。その人は、倶知安出身でカラオケ機器の営業をやっていると言っていた。筆者が初めて北海道に来たことを知ると、いろいろと自分の北海道に対する愛情を語ってくれた。
 その中で、何かのきっかけで出たのが「ほっけ」だった。当時、筆者はその名前の魚の存在は知らなかった。しかし、その青年は、見ず知らずの筆者に対し、その「ほっけ」について熱く語った。そしてついに、「じゃあ、これから食べに連れて行くよ」という事になってしまった。日付はすでに変わっている。にも関わらず、その人は市内中心部からわざわざ地下鉄で6駅離れた琴似という所に連れて行ってくれた。結局、目的の店は閉まっていたのでそのまま宿まで送ってもらったのだが、到着したときは午前3時になっていた。
 深夜に見ず知らずの人間を連れていってまで食べさせようとする「ほっけ」とはいったいどんな魚なのだろうか、と非常に気になった。しかし、その後居酒屋で食べた「ほっけ」は、皮の味がちょっと印象に残っているだけの普通の焼き魚でしかなかった。おそらく、「北海道のほっけ」とは別物なのだろうと思いつつも、自分の中でも「ほっけ」とは、「居酒屋で焼き魚を食べたいときに頼む無難なメニュー」でしかなくなっていた。
 メニューで「ほっけの開き焼き」を見たとき、その17年前の事を思い出した。そこで早速注文する。そしてしばらく待たされて待望の「ほっけ」が机に置かれた。
 早速、一口食べてみる。その味は、東京で食べた「ほっけ」とは全くもって違う味だった。脂が乗っているのだが、それでいて油っこくない。また、身の味自体も、非常に美味い。これまで食べた全ての食べ物の中でも上位に入るほどの美味さだ。なるほど、これなら見知らぬ人間に食べさせるために数キロ離れた店まで連れて行きたくなるのも道理だ。その未体験の美味さに感動するとともに、17年前にそれを教えてくれた人に、改めて心の中でお礼をした。
 他に頼んだルイベやラムのあぶり焼きも美味しく、さらに飲む方でも「昆布焼酎・礼文島」というのがこれまた美味だった。礼文島で昆布と聞いたときは、2度目の北海道の礼文島での事を思い出したりもした。
 最初、延々と待たされた時は、とんでもない失敗をしたと思ったが、あの「ほっけ」だけでも十二分に満足できた。それほどの美味さだった。

ラーメン共和国

 当初は、翌日に定山渓温泉に行こうと思っていたのだが、体調と雨のために中止し、札幌駅に向かった。出るときにホテルを見たら、やはり屋根に社長の顔が印刷されていた。このホテルグループは今度、我が地元にある幕張プリンスホテルを買収したのだが、新体制になったら、あそこにも社長の顔が印刷されるのだろうか、と思い、ちょっとげんなりした。
 札幌駅では「ラーメン共和国」という所に行った。これはデパートの最上階に、道内各地のラーメン屋を集めたものだ。「共和国」の内装はここ数年の定番の「昭和30年代」となっている。数年前に池袋の「餃子ミュージアム」に行ったが、そことほとんど同じ作りだった。
 中に入ると、まだ日曜の11時代だというのに、すでに行列ができている店もあった。適当に歩いていたら、「旭川ラーメン」の店が呼び込みをしていたので、つられて入ってみた。ラーメン自体は特に美味くもまずくもなかった。もっとも、筆者には「ラーメンの味」というものを判別する能力はほとんどないので、この評価は何の参考にもならないが・・・。
 なお、自分が食べている間に行列ができていた。したがって、評価の高い店なのだろう。とりあえず、行列ができる店に並ばずに入ったのだから得をしたと思うことにした。

札幌ドーム

 その後は、この日のもう一つの目的地である札幌ドームに行く。札幌から地下鉄東豊線というのに乗るのだが、ちょうどこの「共和国」のあるデパートと駅はつながっている。そこで降りていったのだが、地下2階あたりの踊り場に百円ショップが入っていたのが面白かった。
 その東豊線に乗って、終点の福住駅で降りる。改札を出るといきなり、地下道にファイターズの横断幕が何枚も出ていた。地下鉄という事もあるのだろうが、海浜幕張駅よりも一枚上手だ。これで、海浜幕張駅のように、電車の発車音をファイターズの球団歌にすればより完璧だな、などと思った。
 しばらく歩いて球場へ向かう。やけに風が強く、「なんかマリンスタジアムに行っているみたいだな」などと思った。そして歩道橋を渡って球場につく。球場向かいの店が「頑張れ、ファイターズ・コンサドーレ」という電光掲示板を出していた。このあたりにも、「地元球団」という雰囲気がよく出ている。
 札幌ドームでは、試合のない日に「ドーム展望台開放」と「ドームツアー」という企画を開催している。展望台は、球場の屋根近くにある、高さ53メートルで、ドームの内外を見ることができる。ここに行くには、まずエレベーターで3階に上がる。そこは、野球開催時に「アリーナビューシート」と呼ばれる所のようだ。カウンターがあり、そこで飲食しながら試合観戦も可能となっている。
 そのまま、バックネット裏の上まで行くと、長大なエスカレーターがあり、そこから展望台へいくようになっている。
札幌ドームを上の方から見た写真展望台へのぼるエスカレーター

左・そのあたりからドームを撮った写真。グランドでは草野球が行われている。右・展望台にのぼるエスカレーター。※いずれもクリックすると同じ窓で大きな写真が開きます)

 展望台はドーム内とドーム外に一つずつついており、中のものはドーム全体が見える。また、外についているものは、高さ53mから札幌市さらには周辺の山々や日本海まで見ることができる。ただ、この日はあいにくの雨だったため、なんとか札幌駅ビルが判明できた程度だった。
 一通り、ドーム内外を見ているうちに「ドームツアー」の時間になった。集合場所にあまり人がいないので、数人での「ツアー」かと思ったら、名古屋からの団体客が直前に現れ、かなりの大人数になった。
 最初は、試合時に見ることができる通路を歩いて、「球場内の売店は、一塁側と三塁側にそれぞれ同じ店が対称的に配置されている」などという説明を受ける。続いていよいよ球場に入り、まずスタンドに座った。そこで、バックスクリーン近くに新庄選手が個人で出した広告があるなどの説明を受ける。続いて、札幌ドームの名物である、「野球場⇔サッカー場」の転換システムの説明があった。
 以前から、札幌ドームでの野球中継を見ている時に、左右の外野席にある「切れ込み」の存在が気になっていたのだが、あれはその転換システムの一環である事を知った。あそこからバックスクリーン部分が開閉し、そこから、外で育てている天然芝をドーム内に入れるとのこと。その豪快な仕組みは、ある程度知識があってもやはり驚かされた。(なお、この仕組みの詳細に興味がある方は公式サイトの解説ページをご覧ください)。
 ちなみに、右下の写真は、そのサッカーの試合時にドーム内に入る芝。と言っても、雪に覆われている。しかしながら、ドーム内に置いたままだと数日でダメになるそうだ。ドーム内より雪の下のほうが生育に適しているというのだから、自然というのは面白い。
新庄選手の広告ドーム外に置かれているサッカー場

左・新庄選手が自ら出した広告。左・ドーム外で雪に覆われている芝。サッカー時にはこれがドーム内に入る。※いずれもクリックすると同じ窓で大きな写真が開きます)

 その後、今度は普通の試合時には入れない「関係者専用」の所に行った。まず最初にブルペンに行く。客が地方から来た人だという事を意識したためか、見学するのは「ビジター」である一塁側だ。ブルペンの映像はたまにTVで見るが、当然ながら、画面で見るより、プレートからベースまでの間は長く見える。
 続いて選手が試合前などに軽食を取る部屋を見る。案内の人に見るように言われたので、見てみると、床一面に細い溝のようなものが入っている。なんか独特の意匠なのかと思ったら、続けて、「この床は元々何の模様もありません。これらの線は全て選手のスパイクによるものです」という説明が入った。そう言われると、改めてスパイクを履いた選手がここを歩いている姿が想像できた。
 続いてロッカールームに。サッカーではW杯の時にイングランドが使ったとのことだが、ベッカム選手のファンは、どれか一つは彼が使ったという事で、全てのロッカーをさわったそうだ。また、入口に近いところが「最上席」で、たとえば清原選手はそこをいつも使っていたらしい、などという解説もあった。マリーンズファンとしては、「あのへんを福浦選手が使って、あのへんは西岡選手か」などと思いを馳せたりして面白かった。
 その後、シャワー室などや監督室など、一通りの施設を見た。草野球の試合がなければ、ダグアウトにも入ることができるそうだ。

 というわけで、展望台・ドームツアーとも大いに楽しむことができた。これで1,200円ははっきり言って安いだろう。しかも、展望台開放のために、長大なエスカレーターを常時動かしており、人員も配置している。ドームツアーにしても、専門の案内人がいるわけだし、電気代などもかかるだろう。少なくとも、今日の人の入りを見ている限り、黒字が出ているかどうか疑問だ。とはいえ、このようなサービスを用意しているというのは、遠くから来た身としては本当に嬉しい。自然と、「この次はぜひ試合が行われている所を見に行きたい」という気持ちになった。ファン感謝デーの時に球場に入るのでさえ長い行列に並ばされるほど閉鎖的な、我が地元球場とはえらい違いだ。
 マリーンズの球団社長も、「海浜幕張駅から球場までの歩道を人工芝で舗装する」などと意味もなく出来もしない事を言う暇と予算があるなら、この「ツアー」を行ってほしいものだと思った。(※もちろん、マリーンズのファンサービスも意欲的だという事は理解しています。念のため)。

調査不足で目的の店に行けずに帰る

 ドームを出た時点で滞在できる時間は残り3時間ほどとなった。残る「目的地」は、札幌駅構内にある「よつ葉乳業」が経営している「ホワイト・コージ」という店だ。ここは、直営店なだけあって牛乳が美味しい。17年前に初めて札幌に行ったとき、偶然入ってすっかり気に入り、それ以降も、札幌に行くたびに利用していた。特に印象に残っているのは、牛乳にソフトクリームを浮かべた「ミルクフロート」だった。もっとも、「よつ葉」が経営している、という事と、牛乳の美味さは覚えているが、店の名前は忘れていた。
 そこで、市内を適当に散歩した後、最後に行くつもりだった。ところが、いざ札幌駅に着くと、どこにあるのか分からない。複数ある札幌駅の地下街の地図を見ても分からず、一通り歩いたのだが、それでも分からない。
 今にして思えば、宿泊先に、WEBを見ることができる設備があったのだから、下調べをしておけば良かったのだが、今更どうしようもない。結局、あきらめたのだが、帰宅して調べてみたら、自分が探して通ったところに店はちゃんとあった。「店がない」という先入観と焦りで判断が狂ったのだろうか、我ながらよく分からない。
 というわけで、「やり残し」もあったが、思いもかけずに17年前の念願がかなうなど、短いながら有意義な札幌小旅行だった。次回行くのが何年後になるのか分からないが、ぜひとも、「札幌ドームでの野球観戦」「ホワイト・コージの場所を間違えない」など、今回生じた「課題」を達成したいものだ。