歩道のないバス停
2007/6/21
幕張本郷と京葉線を結ぶと言えば、日本最大級のバス路線である海浜幕張行きがあまりにも有名だ。このバスも、同じように京葉線の駅である新習志野駅とを結ぶのだが、その本数ならびに沿線の雰囲気は全く違う。そして、途中には奇妙なバス停も多く、乗っていて非常に楽しめる路線となっている。
幕張本郷のバスターミナルを出た直後は、他路線と一緒に海浜幕張方面へ向かう道を走る。しかし、最初のバス停・幕張西二丁目を過ぎると、早くもこのバス路線らしい、奇妙なものを見ることができる。
新習志野駅は幕張本郷から見て東にある。ところが、このバスは幕張西二丁目を出るとすぐに、正反対の東方向に左折するのだ。次の幕張西中学を過ぎても、まだバスは新習志野と正反対の方向へ進む。そのまましばらくすると、やっと右折し、「幕張コーポ前」というバス停に着く。
この「幕張コーポ前」だが、この当たりの道には車道に接して歩道がない。車道と歩道の間に植栽があるのだ。したがって、ここのバス停も植栽の中に立っている。バス停のある地面も舗装されていない。幕張本郷行きのバス停は、雨天対策なのかマットが敷いてある。しかし、新習志野行きにはそれすらなく、ただ土があるのみだ。おそらく、このバス停で新習志野行きを待つ人はほとんどいないのだろう。しかし、降りる人はいるわけだから、雨の日などはかなり大変だろう。
しかし、これはまだ序の口である。しばらく進み、川を渡ると、やっとバスは本来の目的地である新習志野方面に左折する。そして、川に沿って走り、次のバス停・幕張西五丁目に着く。
新習志野行きは普通のバス停だ。しかし、向かい側にある、幕張本郷行きのバス停はすごいところにある。先述したように、道は川に沿っている。ところが、川のあるほうには歩道はない。一応、白い点線が描かれてはいるが、そこを歩く人の利便を考えた横断歩道などは存在しない。
その、道路と川の間にある空き地に幕張西五丁目バス停は設置されている。つまり、このバス停で降りると、後ろは川で左右は歩くことのできない空き地で、目の前は車道なのだ。もちろん、交通量はたいした事がないし、上下二車線の道だから、左右の様子を見れば、特に問題がなく道を渡って向かい側の歩道に着くだろう。とはいえ、ここまで乗降客の安全が考慮されていないバス停はかなり珍しいだろう。お年寄りやベビーカーを押すお母さんなどはかなり神経を使うのではなかろうか。
さて、幕張西五丁目を過ぎるとすぐに交差点がある。その道は、幕張本郷駅からしばらくの間通っていた道だ。そして信号待ちをしていると、たいてい同じ京成バスが目の前を通り過ぎる。幕張西二丁目までは同じ経路を走っていた、日本最大級の本数を誇る、幕張本郷と海浜幕張を結ぶ路線だ。そして、2007年になって、この交差点のすぐ近くに幕張西第三公園前という海浜幕張方面専用のバス停が出来た。幕張西五丁目から歩いてすぐだ。もちろん、幕張本郷からの本数は大差だから、近辺の人の大半はこちらのバス停を使うようになったと思われる。そして、逆に幕張本郷駅に行くときは、先述したように、川縁にあるバス停を使うのだろう。これほど、上りと下りでバスの利便性が違う地区も珍しいのではないだろうか。
その通りを渡った後も、川に沿った道を走る。次の幕張西六丁目も、五丁目と全く同じ構造で、幕張本郷駅行きは安全地帯のない所にある。
幕張西六丁目を過ぎると、道はいきなり90度左折する。さらにしばらく進むと、今度は90度右折する。一応、上下二車線の道だが、バスが曲がる時は逆方向の車線まで車体がかぶるため、この角では「交換待ち」をする風景も見られる。
そして習志野市に入るのだが、すると車窓風景がガラリと変わる。派手な建物はないものの、落ち着いた感じの住宅地になるのだ。先ほどまでの川沿いの殺風景なバス停が嘘のようである。そのバス停も、安全地帯どころか、屋根付きの立派なものになる。これまでと同じ路線とは思えない。
その住宅地を抜けるところに、「第七中学校前」というバス停がある。ところが、このあたりではたまに奇妙な事が起きる。向こうからすれちがうバスの行き先を見ると、そこには「新習志野駅」と書いてあるのだ。このあたりは、津田沼駅発新習志野駅行きのバス路線も走っているのだが、この路線も住宅街をまわる関係で、この地区で遠回りをしている。一方、幕張本郷発のバスはそれにつきあわず、普通の経路で新習志野に向かう(まあ、幕張本郷駅の近くではそれ以上の「寄り道」をしているのだが・・・)。というわけで、ほんの短い間だが、循環路線でもないのに「新習志野行きと新習志野行き同士がすれちがう」という奇妙な現象が発生するのだ。
そのまましばらく進むと、大通りが現れる。そこに左折して合流すると、京葉線の高架が見えてくる。後は終点につくだけと思いきや、この路線には最後の「見所」がある。
高架をくぐった直後に右を見ると、立体駐輪場があり、その向こうには新習志野駅が見える。そしてバスは「千葉工大前」に止まるのだが、そのまま駅とは90度違う方向に進んで右折する。さらに次の交差点を右折すると、やっと新習志野の駅前バスターミナルに到着するのだ。つまり、直線距離だけ考えたら千葉工大前で降りたほうが駅に早く着ける。実際、車内でもその旨の放送が流れる。新習志野行きの場合、大通りを渡る必要があるが、幕張本郷行きの場合は、その必要もない。したがって、新習志野駅の改札を出た時にバスがちょうど発車した、という場合は、諦めずに千葉工大前まで走れば、乗り損ねたはずのバスに乗れる可能性は高い。
というわけで、本数こそ少ないが、途中にいくつも驚かされる風景を持つのが、この幕張本郷と新習志野を結ぶ路線なのだ。