携帯電話水没顛末記

2007/6/17

 ある日の事だった。手洗で用を済ませ、出ようとする直前、ふと足下に物が落ちているのが気になった。何だろう、と思ってかがんだ瞬間、いきなり水音がした。ふと見てみると、胸ポケットに入れていた携帯電話が水に沈んでいた。
 半年ほど前に、電車の中で携帯電話を紛失したばかりである。それ以来、用心のためにストラップもクリップにし、落とさないように注意していたつもりだった。しかし、ほんの一瞬の油断が事故を引き起こしたのだった。
 とりあえず拭き、その後に開いてみた。しかし、昨晩充電したばかりだというのに、「電池がありません」という警告画面が出て、そのまま電源が落ちてしまった。
 慌ててドコモショップに持っていく。しかし、「水に濡れた場合、中の部品が溶けている可能性もあるので、修理はできません」ととりつく島もなかった。その時初めて、「携帯電話が濡れる=終了」という厳しい現実を知った。
 そこで今度は、ネットで「携帯電話 水」などで検索をかけてみた。すると、いくつか体験談が出ていた。中には「復活」させた人もいたようだ。いずれにせよ、対処法は「とにかくひたすら乾かす」事しかないようだった。

 そこで、とりあえず、電池パックを抜き、各差込み口を全て開いて、風通しのいい所に置いた。ただ、ずっと乾かし続けるわけにはいかない。なぜならば、この携帯は、筆者にとって定期券でもあるからだ。とりあえず、これがないと電車に乗れない。
 それ以前の問題で、水没して電子マネー機能がダメになっている、という最悪の危険性があったので、それを心配していた。幸い、手元に「電子マネー機能が生きているかどうかを確認する装置」があったので、とりあえず数時間干した後、それを使ってみた。すると無事認識したので、ひとまず安心し、電車に乗った。
 その後もひたすら乾かした。すると、時が経つたびに機能が復活してきた。一時期は、キーを押すと文字二つが入力される、などという悲惨な状況だった。しかし、電子マネー機能を始め、その文字入力機能、さらにはカメラや音楽演奏機能など、順を追って復活してきた。
 ただ、どうしても一つだけ復活しない機能があった。それは通信機能である。何日乾かしても、どうしてもFOMAカードを認識しない。したがって電話もメールもできない。これでは他の機能がいくら復活しも「携帯電話」としては使いようがない。今回事故にあった機種は使い勝手が良く、また入れ直しのきかないデータも少なからず入っていたので、なるべくなら使っていたかった。しかしながらこれでは諦めざるを得なかった。

 最初に書いたように、事故にあった携帯は、前のを紛失したために半年前に替えたばかりである。しかも、その半年前に紛失した携帯も、諸事情によりその半年前に新規購入したばかりだ。そういう事情もあり、可能ならば同じ番号を継続して使いたかった。他の会社・ブランドの場合はよく知らないが、FOMAの場合、新規購入は安く、MOVAからの変更も安いが、既にFOMAに加入している人が同じ番号で新たな電話機を買う「買い増し」はえらく高い。
 今回は、不運な事故によるものなので、その買い増し料金は何とか安くなるかと思っていた。ところが、ドコモの窓口で尋ねたところ、確かに通常の場合よりも安くなるが、それでもその時点で一番型落ちした機種への「買い増し」でも1万6千円くらいするとのことだった。これが解約して新規購入なら、「いちねん割引」の解約金と、新規の登録時無手数料を合わせても6千3百円だ。そして、ちょうど当時は904iシリーズ発売直前という事もあり、その時点での最新機種である903iシリーズは、近所の店では300円で売っていた。
 筆者の携帯番号を知っているのは、家族と職場の人と大学時代のサークル仲間で95%をこえる。そのため、3回告知すれば何とかなる。相手には少々迷惑をかけることになるが、いくら何でもそれだけのために1万円近くを余計に使う気にはなれない。というわけで、結局、新規購入を選ぶことにした。
 ここのところ、半年おきに買っているため、購入手続きも慣れたものだった。1時間程度で手続きを終え、300円でその時点での最新機種を入手した。その後、定期券の手続きなども問題なく行い、何事もなかったように新たな携帯電話での生活に移行することができた。
 とはいえ、やはり気に入っていた機種を失うという残念さと、半年ごとに番号を変える、という結果になった気恥ずかしさは残った。そういう事もあり、買い換えをして以来、たびあるごと、特に水のあるところに行くときは、携帯ストラップのクリップがちゃんと機能していることを確認する癖がついてしまった。とりあえず、今回の機種は3年くらいは使い続けたいものである。