おんな甲子園!(野妻まゆみさん)

2000/06/11

掲載・LaLaか花とゆめ(1987年ころ)
 親に男として育てられた女性が、性別を隠して幼なじみらと甲子園で活躍する、という話。「女性が野球」というのはいろいろな漫画にあるが、ポジションが捕手というのはかなり珍しいと思う。
 野球シーンは一試合を除けば、奇をてらったことはなく、主役以外のキャラたちもそれぞれ味を出しており、単行本1冊の中に無理なくおさまっている。実際にこんな試合もあるかな、という感じで読むことができた。
 ちなみに決勝戦で主人公のチームが負けるのだが、その試合展開は、「同点から延長に入り、12回表に敵の主砲が3ラン。その裏、2点かえして1死1・3塁でライナーゲッツーで試合終了」である。
 このように本筋だけでも充分面白いのだが、この作品は普通の読者には解らない作者の奇妙なこだわりがあり、それもまた面白い。
 主人公のいる高校は「兵庫県代表・大賀(タイガ)高校」で21年ぶりの甲子園出場。選手の名字は全部阪神電鉄の駅名なのである。他のチームもほとんどが鉄道の駅名である。しかも、使われる私鉄は「京都の比叡山のふもとのローカル私鉄」や「広島市内の路面電車」など、地元の人かよほどの鉄道マニアでないと知らないような名前ばかりである。
 ちなみに、名字が駅名でないキャラはいずれもプロ野球選手の名前を使っている。「燃える男・中日工業高校の干野監督」などは思い切りそのものだ。ただ、その高校の「主砲・落相くん」は元となった選手と似ても似つかぬ美形キャラだったが。
 というわけで、本筋・隠し味(?)ともども、大変筆者の嗜好に会う作品であった。  


「心に残った名作−ストーリー漫画」

「漫画資料室」に戻る

トップページに戻る