ねこボラ部のみるくさん

 漫画家業のかたわら、地域で「猫ボランティア」をやっている作者による実録漫画。
 猫の命と暮らしを守る、という事がいかに大変であり、それを多くの方々が地道に支えている、という事をわかりやすく描いている。
 作者のやっている猫ボランティアは、主に、野良猫を捕まえて、去勢手術を行い、再び野にもどす、という「TNR活動」である。さらに、不遇な猫を助けては、「譲渡会」で新たな家族を見つける仲介役もやっている。
 その経験について、悲しい出来事も隠さず描かれた作品だ。

 単行本一巻の短い作品だが、話の構成が非常によく、惹きつけられる。
 最初の話は、生まれたばかりの猫が捨てられて、カラスに襲われて死んでしまう話だ。あんなかわいい子猫が…と思い、読んでいるだけで辛くなった。
 そして、残された他の兄弟が猫を愛するひとに引き取られる過程を描いている。
 次のシリーズでは「多頭飼い崩壊」を描いている。猫に不妊手術をする事に、違和感を持つ人もいるようだ。しかし、それをしないとどんな事になるのかについて、生まれた子猫の末路も含めて描いている。また、作者や猫ボランティア仲間の、体を張った猫助けの描き方も心に残った。

 そして、後半では、猫アレルギーを扱うが、そこでの話はハッピーエンドとなる。導入部に悲しい話をもっていき、後半で救いを描く、という構成が上手いと思った。
 また、猫アレルギーの真相や、あの東日本大震災で猫がどうなったか、などといった問題にも触れている。
 最終話では、作者が猫に出会い、助けるようになったきっかけを描いている。
 一つ一つの絵や台詞から、作者が猫を助けているのと同じくらい、作者が猫に助けられている、という事が伝わってくる。

 改めて、人と猫の共存というものについて色々と考えさせられた名作だった。
 猫が好きな人はもちろん、そうでない人にもぜひお勧めしたい一冊である。