李さんちの物語(黄美那 さん)

2005/06/07

掲載・1990年代後半から2000年にかけてのモーニング

 韓国の人による、ある家庭を舞台に描いた作品。7人の兄弟姉妹とその両親・祖母・結婚相手・子供たちの色々な話が描かれている。
 一番近い国なだけあって、そこでの生活や考え方は、日本に近いものが多い。その一方で、伝統的な風習や徴兵制・南北分断の傷跡など、日本にはないものも話の中に出てくる。それらの話と、「恋愛」はもちろん「育毛」だの「禁煙」、さらには「対戦ゲーム」などといった極めて普遍的な題材でも話は作られている。

 そこに出てくる兄弟たちも、普通の会社員や学生から、TV業界人や作家を目指す人など、さまざまな立場の人がいる。さらに性格も多種多様だ。それをたばねるのは、元軍人で威張りたがりの父と、常に一歩引いている母という、ともに古風な二人である。そしてその上には、かなり老いているが、話の要所で存在感を発揮する祖母がいる。これらの各人物が、世代ごと・個人ごとにそれぞれ共通していたり異なっていたりする性格を持っている。特にこの祖母は、普段見せる恬淡ぶりに隠された、失った息子に対する激しい想いが隠されていたりして、非常に印象に残る人になっている。
 世代が若くなればなるほど、国の違いが感じられなくなり、「そこらへんにいそうな人」になる。しかしながら、儒教的慣習や徴兵制度など、特殊な条件下になると、とたんに「異文化」を感じさせられる。
 普通に家族を描いた作品としても十分楽しめるが、それに加えてそのような国による違いを知る事ができる。もっとも、その「違い」のうち、南北分断のように、日本が遠因となって生じてしまった悲劇もあるので、単に「楽しむ」だけではすまない部分もあるのだが。





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