刑事剣士Xカリバー(藤原昌幸 氏)

2004/08/11

掲載・1988年から1990年のコミックコンプ

 往年の漫画・特撮のパロディをふんだんに散りばめたギャグアクション漫画。剣道の防具をまとった主人公「裁断(さばき・だん)」が「Xカリバー」に変身して、悪の組織「オリュンポス」のスポーツ怪人と戦う、という内容。
 このスポーツ怪人のキャラクターや設定が面白い。ボウリング男はその名の通りボウリングを使って戦うのだが、そのボールは自分の頭なのだ。鼻に指を突っ込んで自らの頭をもぎ、それを転がして「メガトン・スマッシャー」だの「ギガトン・スマッシャー」などといった技(?)を繰り出す。
 他にも、縄跳びを無料配布して貰った人を操って縄跳びをさせ、それによって発生する振動で東京を破壊しようとした「なわとび男」だの、正月に凧に乗って成層圏からレーザー光線で攻撃する「たこあげ男」などユニークなスポーツ(?)を武器にした怪人もいた。
 その中で、筆者の印象に特に残っているのが「トレーニング3兄弟」である。「腹筋男」「腕立て伏せ男」「背筋男」の3人で、それぞれの得意とする運動を1分間に1万回行う事ができ、その速さは、姿が見えなくなるほどだ。とはいえ、それ以外には何もできないので、戦いには全く役にもたたない。3人あわせて2分で倒されてしまう。その「鍛えた部分だけ筋肉質・あとはタダの人」という外見もあわせ、一人平均1分も活躍できなかったキャラであるのにも関わらず、その印象は強い。
 もちろん、主人公もかなりの男だ。考えすぎると知恵熱が出るという体質もあり、とにかく何も考えずに戦い続ける。しかも、扱いもひどく、出動の際にパトカーのサイレンを持って車の上に乗せられた事もある。さらに、名前であり、題名ともなった「Xカリバー」だが、敵のスポーツ怪人はこの名前で呼んでくれない。本人の懇願にも関わらず、最後まで「剣道男」と呼ばれつづけた。

 そしてもう一つの面白さが、冒頭にも書いたような往年の作品のパロディだ。例えば、敵の首領が東京の空に自らの姿を投影して「宣戦布告」を行う。これは「デビルマン」で悪魔王ゼノンが世界中の空に自らの姿を投影して「宣戦布告」をした場面のパロディ。しかもただパロっただけでなく、全世界の空に表れたゼノンが「ロンドン・○時」「北京・×時」と、時差を利用して「世界全体に同時に出現」を表現した事を、「新宿・午後10時」「東京駅・やっぱり午後10時」と表現し、「東京にしか出現できていない」事を強調しているのだ。
 また、アイスホッケー男の襲撃により日本中が豪雪に襲われた場面がある。ここで、TVがアイスホッケー男の猛威を報道した後、いきなり野球中継に画面が切り替わるのだ。これは、ウルトラセブン最終回で、「ゴース星人が世界中を攻撃しているにもかかわらず、TVでは野球中継をやっていた」というファンの間では有名な場面(?)のパロディである。他にも、そのような濃いパロディが各所に描かれていた。
 そして、毎回の話の後には、「次号予告」があった。これもヒーロー物の番組を意識しており、最後に「次号、刑事戦士Xカリバー、ブッたまげるぜ!!」という決め台詞まで用意しているほどのこだわりがあった。そしてその「次回予告」は最終回にもあり、その後には、描き下ろし企画として、「次回シリーズ」をはじめ、6本の「続編」まで紹介されていた。
 作品全体の面白さはもちろんだが、作者の細部にいたるギャグのこだわりで、さらに楽しめる作品だった。





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