じゃぱにーず☆どりーむ(永野のりこ さん)

2003/08/06

掲載・1991年の「ミステリールージュ」(収録・竹書房刊「オタクのご主人」)
 さまざまなジャンル・雑誌で活躍する作者が、少年キャプテンからヤングマガジンに行く間に、なぜか描いていたレディースコミック。
 ドケチをモットーにしていたヒロインを、「その節約は地球環境を守るための崇高な行為」と勘違いした超大企業の後継ぎが求婚し、駆け落ちのような形で結婚して、リサイクルショップを開く、という話。
 このヒロインのドケチ精神と、それを「地球への愛」とカン違いしてよりヒロインが好きになるボンボン、というギャグを基本に話が進んでいく。その際の会話に出てくる、ヒロインの「米のとぎ汁は味噌汁に使って、さらに残った部分は家庭菜園に使う」だの「衣食住のなかでとことん切り詰めても死にゃーしねーものは『衣』」などといった、ケチ道(?)の哲学がまた面白い。
 あと、「レディースコミック」なので、一応、毎回そのジャンルにふさわしいシーンがある。しかしながら、その最中にボンボンが「二人で地球にやさしいリサイクルショップを作ろう!」などと言い出したりすのだ。そのあたりの描写に対する作者の照れぶりが、普段にも増してハイテンションな「まえがき・あとがき」に書かれていて、それがまた笑える。

 というように、基本的には笑いを提供する漫画だ。しかしその一方で、「いくらヒロインが節約して毎月10万円貯金しても、ボンボンの別荘一つに遠く及ばない」という描写がある。また、「ボンボンがいくら『地球環境』と叫んで財産と地位を捨てて活動しても、所詮町内のゴミ減少くらいにしか役に立たない」というのが現実だ。
 このあたり、既に存在するものが大きすぎて、多少の努力では実効は得られない、という現実を描いており、ちょっとした物悲しさを感じさせられた。
 また、90年代初頭に描かれただけのことはあり、日々利率が下がっていく(それでも現在の10倍以上だが)などの描写が随所に見られ、「失われた13年」の序章はこうだったのだな、と追体験することができる。




「心に残った名作ーギャグ・コメディ」

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