1980年代から90年代に存在した「野球四コマ専門誌」の一つに掲載されていた作品。他の作品はプロ野球選手を題材にした軽いギャグ四コマなのだが、この作品は他の作品とは異彩を放っていた。劇画調の絵で漫画も四コマでなく、ネタも濃い目であった。
当時、筆者はタイガースファンであり、パリーグではブレーブスを応援していた。しかしながら、この作品で印象に残った作品は、なぜかロッテオリオンズ(当時)に関するものだった。
その中の一つは「野球劇画での表現ほど実際の監督・選手はカッコ良くない」みたいな感じの作品だった。その細かい描写は覚えていないのだが、オチだけは良く覚えている。「でも、実際には漫画そのままの人もいるんですよね」みたいな文字の下で、オリオンズのユニフォームを着た金田監督(当時)が、「走れ走れ、野球は巨人やー!」と言って「金田式健康棒」を持っている、というものである。
そして、もう一つは、本稿の主題である、「テレビで見れない川崎劇場」というものだった。この題名は、一見バカにしているようだが、実は球団謹製の宣伝文句。TV中継がない事を逆手に取って(?)球場観戦をうながすTV広告を打ったのだった。
それを元にしたネタは以下のようなものだった。若い女性二人が、その広告を話題にしながら、川崎球場に野球観戦に行く。すると、ジャンパーを着た若い男が、いきなり走りよってきて、その女性のバッグをひったくるのだ。そして、「自分はこうでもしなければ食べていけない」などといいながら、走り去ろうとする。すると、その前に、パンチパーマでいかにも極道の兄貴風の男が登場。「ホリ、やめんか」などと言いながら、バッグを取り戻し、彼女に返すのである。
普通の野球場ではありえない事に驚きながら、川崎球場に入る二人。そこで試合開始時に彼女が見たのは、「四番、ファースト、アイコウ」という選手紹介で出てきた、先ほどの極道の兄貴風の男だった、というようなオチだったと記憶している。
当時の主砲だった愛甲選手が極道みたいな外見だというが主に、ついでにオリオンズの若手選手など薄給に違いない、という事でネタを作っているわけだ。当時、筆者は、オリオンズの堀選手は名前しか知らなかったが、「偶然、作者と同じ苗字なだけで、こんな役回りをやらされるとは・・・」と苦笑したものだった。
それから約15年の時が流れた。「テレビで見れない川崎劇場」は千葉に移転し、着実にファンを増やし、ついに今年の開幕戦では、「試合開始の数時間前に入場券完売」という現象まで起きるようになった。今年は他にも何度も「札止め」があった。
そして堀選手も「太平洋一の右打ち」と監督に称えられる選手となり、ついには「日本一戦士」の一員、さらにはベストナインとなった。そう考えると、この「テレビで見れない川崎劇場」はまさに隔世の感がある作品となっている。