OLパラダイス

 主人公の「広田さん」こと「広田りえ」というキャラクターが非常に強烈に心に残る作品。とにかくそのボケっぷりがすごい。
 まず、彼女は基本的にいつも口が開いており、目が開いていない。しかもセリフはすべてフキダシではなく、書き文字で表現される。このへんは直接読んでいただかねばわからないだろうが、その表現がいかにも「ポケー」とした感じをうまくあらわしているのだ。(ちなみに、泥酔するとシャキッとして目が開き、セリフもフキダシになる、というこれまた奇抜な設定があった)。
 もちろん、外見のみならず、頭の中も超絶的にボケている。カニ料理屋で「茹でたらば蟹」という看板を見ると「茹でたらバカになるなんて怖いですね」と反応する。コピー機の操作説明で「ウインドーを開けて上から三番目のボタンを押す」とあれば、即座に「コピー機の後ろの窓を開け、自分の服の三番目のボタンを押す」のだ。もちろん、与えられた仕事は全然こなせず、常にデスクには「期限切れの書類」がうずたかく積もっている。
 他にもボケっぷりを挙げたらキリがないが、いずれも「四コマに出てくるドジOL」を数光年上回っている。それらのボケを考案する作者の感覚には本当に感服させられた。
 また、脇を固めるキャラも、完璧超人的な仕事をこなしながら、可愛いものを見ると、愛しさのあまりに無意識に握りつぶすという一面を持つ「大谷さん」など、これまた強烈な個性を持つキャラが多かった。

 掲載誌は「まんがタイムラブリー」というようにラブコメ系の四コマを主体に創刊されたようだが、いつの間にかこの作品が人気ナンバーワンとなり、表紙も毎号「広田さん」だった。はっきり言ってどのへんが「ラブリー」なのかよくわからなかった。
 一応、「広田さん」に思いを寄せる「梶原くん」という同僚もいる。しかし、冬の週末にお台場のドライブを誘えば「今日は水着を持ってきていない」と断られる。また、机の中に彼女の写真を貼っているのだが、その写真を発見して彼女は、その自分の写真にラクガキして喜んでいるのだ。
 とにかく、「天然ボケ」を極限までつきつめた、という点において、他に類を見ない作品である。
 現在、作者は違う名前で同人誌を中心に活躍している。そこで発表される作品も十分に楽しいのだが、またいつか、このような超人的なセンスのギャグも読みたいものだと思っている。

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