江戸主水ハミルトン(ながいけん閣下)

2004/05/05

掲載・1988年の「ファンロード・カーニバル」

 いまだに人を殺せずにいる「辻斬り主水」が主人公の時代劇漫画(?)。なぜ、人を殺せないかというと、いくら斬っても相手が死なないからだ。確かに、「ながい漫画の大原則・第一原則」に「奴らは死んでも生きている」とあるように、ながい漫画のキャラは、一度死んでも次の話では普通に生き返る、というのはこの20年間の絶対的な「原則」である。しかし、なぜか辻斬り主水に斬られたキャラは、その「一時的な死」すらないのだ。一番最初の「被害者」である、「達人らしい剣術家」などは、斬られまくって「その程度の剣、片腹どころか全身死ぬほど痛いわい」などといいながら、逃げ去っていく。
 とにかく、何をやっても相手が死なないものだから、主水も自分の「辻斬り道」に疑問を持ったりもする。しかし、「天国にいる両親」に自分の生きる道を尋ねても、夜空に浮かぶ両親は、ものすごい形相で中指を立て、「主水、殺れい!」と命ずるのみだ。その形相の凄まじさは、主水が「本当に天国にいるのですか?」とつぶやくほどである。
 というわけで、辻斬りを続ける主水だが、ある日、忍者に出くわす。実は、この掲載誌である「ファンロード・カーニバル」なるアンソロジーは主題があり、今回のお題は「忍者コミック」だったのだ。そのため、何の唐突もなく忍者が出てきたのだ。とはいえ、いくら出てきても「忍者コミック」でない事には変わりないと思うのだが・・・。
 もちろん、忍者だからといって、他の被害者と違うことなく、いくら斬られても死なない。一瞬、首が飛ぶが、それでも死なないのだ。ちなみにこの忍者、顔は「謎のおっさん」だった。
 こうして、またまた辻斬りを失敗した主水。ついにブチ切れて(?)、「地球人類皆殺し」を宣言する。すると、夜空には先ほどの両親のみならず、父方・母方の祖父母まで出現し、中指を立て、「よういうた、主水、いでき感激」と涙を流しながら称えるのだ。どうやら、この一族は人類を滅ぼすために生を受けたらしい。まあ、おそらくは両親・先祖とも「いまだに人を殺せずにいる」まま、天国に旅立ったのだろうが。
 そして、最終コマでは、主水が微笑みながら、「わし、辻斬り主水です、頑張っています。わしの辻斬り人生、まだ始まったばかり」と、ジャンプの10週打ち切り漫画の最終コマみたいな絵で話は終わる。
 というわけで、「忍者コミックアンソロジー」の中で異彩を放った「辻斬りコミック」だった。