サークルコレクション(小坂俊史氏)

2004/04/24

掲載・2000年代初頭のまんがライフオリジナル

 作品そのものは「西条大学」の児童文学研究会に属する5人のサークルを中心とした学生生活を描く、というもの。季節ごとに新歓・学祭・試験など、学生らしいイベントがある。キャラクターは真面目にサークル活動をやろうとする部長と、「児童文学」には興味がないが、それぞれ特徴のある4人という感じで構成されている。ギャグは平均以上だが、特に凄いものはない。
 にもかかわらず、なぜこの作品が心に残るかというと、それは、この大学にある質量とも異常な他のサークルである。他の大学にもありそうなサークルは「鉄道研究会」「手品研究会」「ヘヴィメタ研究会」くらい。しかも、鉄研は、おしゃれで爽やかな男女が「この三段スイッチバックにしびれるんだ」などと喜んでいるという「異常さ」がある。
 とにかくここの学生は、一点集中のこだわりが強い。「おでん研究会」などは、内部対立が発生し、「ちくわぶ研究会」「こんにゃく研究会」など、それぞれの具に分裂してしまったのだ。食べ物にはだいたいサークルができており、それぞれの「専攻」を生かして、居酒屋でバイトしていたりする。「居酒屋研究会」などは、学内で居酒屋を開業していたりする。そう考えてみると、この大学は、「社会に生きる学問を学べる」と言えるのかもしれない。

 一番印象に残ったのサークルは、「ミクラス研究会」だった。ウルトラセブンに出てくる、一怪獣の「研究会」である。怪獣といっても、セブンが困ったときの時間稼ぎのために出てくるような存在なので、メインを張った話すらなく、登場時間は全部あわせて10分あるかないか、というキャラである。一体、そのキャラだけをどのように「研究」するのだろうか。他にも夏合宿で山の中の空き地でひたすら特訓を続けていた「でんぐり返り研究会」も印象に残っている。
 また、「きつねうどん研究会」も面白い。部長は卒業後にうどん業界に就職し、さらに社内にも「きつねうどん部」を作る、などと宣言する、熱烈なきつねうどんマニアである。しかし、なぜか学園祭では、きつねうどんは売らず、代わりに「きつねうどんムービー・あげを呼ぶ男」を製作・上映しつづけるのだ。学祭で売る程度のうどんなどは作れない、という事なのだろうか。
 なお、主人公は結局、就職活動に失敗し、児童文学の賞で認められたのをきっかけに児童文学者を目指す事になった。実は筆者も、大学時代に所属したサークルが最初の仕事に就くきっかけとなった。そういう意味でも、この主人公や「きつねうどん研究会」の部長に共感を持っている。
 とにかく、題名の通り、どんな活動をやっているか分からないようなサークルが山ほど出てくる。そのサークル名をチェックするだけで十分楽しめる作品と言えるかもしれない。





「心に残った名作ーギャグ・コメディ」

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