Battle For Beauty

 人間が一コマも出てこないという趣向作。絵はすべて、うららかな印象を持たせる風景画と効果線、文字は主人公の「想い」と相手のセリフのみである。
 そして話は絵と全く関係がない。「KGBに捕らえられた工作員が、拷問に耐えた後に敵を皆殺しにする」というものである。
 セリフの配置や組み合わせが巧みなため、無関係な絵ばかりなのに、実際の話である凄惨な戦いの場面を容易に想像することができる。そして、それとはあまりにも無関係な絵と主人公の「想い」の文体に思わず笑ってしまうのだ。
 まあ、「どのへんで笑えるかどうか」という以前に、「どうやったらこのような表現方法を思いつけるのだ!?」という笑撃が心に焼き付く作品なのであるのだが。
 余談だが、ながい閣下は「ゴルゴ13」がすきだったようで、よくパロディのネタにしており、この作品の主人公もゴルゴを彷彿させるものがある。その閣下が連載を休止した数週間後のサンデーに、さいとう・たかを氏の作品が掲載された時に筆者は「あと数週間早ければ『夢の競演』だったのに」ととても残念に思ったものだった。