姉さんBEAT!!(ミドリさん・しゅーとめヘブン)(秋月りす先生)

2006/8/20

掲載・1980年代末から90年代初頭のまんがライフオリジナル

 作品の題名が2回変わっている。最初、雑誌掲載時は「あねさんBEAT!!」だったが、単行本化の際に「ミドリさん」に改題した。さらに、竹書房が年に何回か出す「秋月りす」増刊にも、「しゅーとめヘブン」という題名で、今でもたまに新作が掲載されている。
 この題名の変遷は、そのまま作品の方向性の変遷を表している。連載当初は、「奥さんのほうが年上の新婚夫婦」というのを基本設定にしていた。ところが、その「姉さん女房」という設定での話がうまく作れなかった感じだった。すると、連載開始数ヶ月で、新キャラである「姑」を投入。するとこのキャラが非常に面白く、「姉さん女房」という設定を喰ってしまった。それゆえの単行本化の際の改題であり、現在の「主役交代」なのだろう。
 実際、この姑さんは、主役を奪うだけの力を持った凄いキャラだ。初登場後の最初のネタは、「一人息子の結婚式で、カメラが来る度にVサインをしまくる」だった。そして、息子夫婦の不在時には庭から二階のベランダによじ登って部屋に入ろうとするなど、既存の「姑」という概念とはかけ離れた行為を連発する。
 話が進むにつれ、その行動はだんだん凄くなり、徹夜でファミコンをやったり、町内マラソン大会で高校の陸上部員と張りあって2位になるなど、「若さ」を全開に活躍しまくるのだ。
 このキャラの投入により、最初はうまく作れていなかった主役夫婦のキャラも立っていった。年下の旦那は、家事万能キャラとなり、本来の主役のミドリさんも、この旦那と姑の間に入る形で、生活を楽しむようになった。こうして、設定を生かせなかった「姉さん女房漫画」は、極めて異色の「嫁姑漫画」となった。
 作品そのものの面白さはもちろんだが、この初期設定が生かせないと知るや、迅速に新キャラを投入して、作品の設定から変えて面白くしてしまう、という大胆さが非常に心に残る作品である。





「心に残った名作ーギャグ・コメディ」

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