キャッシュレス大阪出張
2011/9/23
先日、一泊で大阪に出張する機会があった。京都の事業所に寄ったあと、大阪の営業所に顔を出し、あとは難波にある事業所に詰めるという比較的単純な行程である。
いつものように準備をし、早起きして東京駅に出て新幹線の改札を通った。そして、崎陽軒の売店でシウマイを買おうとした。これは、東海道新幹線で出張する時の「恒例行事」である。
支払いのため、財布を出した。ところが、その中には一円もなかった。幸い、売店で電子マネーが使えるため、携帯のモバイルSuicaで事無きをえた。
不思議に思ってよく見たところ、その財布は普段用いているものではなかった。筆者は、普段使っている財布の他に、古い財布を小物入れとして部屋に置いている。朝出る時、間違えてそちらの財布を持ってきてしまったのだ。
ちなみに、キャッシュカードも普段使っている財布に入れてある。したがって、これで帰宅するまで、完全な「キャッシュレス」状態になってしまった。
今更、家に帰るわけにはいかない。幸い、クレジットカードは別の所に入れており、持参できていた。そこで、この二日間、何とか、クレジットカードとモバイルSuicaでやり過ごそう、と心に誓い、新幹線に乗った。
京都に着き、最初の目的地に行く。2時間弱の作業だが、その間、喉が乾いて困った。建物内の自販機には電子マネー対応のものはない。早くも、現金を持たない事の不便さを身を持って味わった。
そこで作業が終わったら早速ローソンに行った。ここはSuicaに対応している。早速、飲み物と軽食を購入する。さらに、キャッシュディスペンサーに行って、クレジットカードでの「キャッシング」を行おうとした。
ところが、二枚持っているキャッシュカードのどちらも入れても「取り扱い不能」と出てしまう。考えてみれば、このような事は一切想定していなかった。したがって、「借金枠」などは設定していなかったのである。
結局、「キャッシング」は諦めて大阪に向かった。ただ、やはり何とか現金を得ようと思い、車内では携帯サイトで金券屋を検索した。クレジットカードで回数券などを買い、それを換金しようと考えたのである。大阪でそれをやるなど、文字通り「ナニワ金融道」の泥沼亀之助だな、などと思った。
しかし、しばらくすると、どれくらい使うか分からない現金のために、そんな割の合わないマネをするのもいかがなものか、と冷静に戻った。というわけで、大阪からそのまま地下鉄に乗り換え、第二の目的地である営業所へ向かった。
ちなみに、大阪の地下鉄はSuicaが使えない。ただ、前回の出張時に買っていたプリペイドカードが600円ほど残っており、それで乗ることができた。
営業所で用事を済ませた後、難波の中心部にある最終目的地に向かう。ここは一人でなく、関西担当の取締役に随行する形になった。そして、再度地下鉄に乗った。
ところが、下車するとき、その取締役のプリペイドカードが残高不足になっていた。しかも、その人は万札しか持っていなかった。そのため、「100円貸して」と言われた。
しかし、もちろん貸しようがない。そこで、「すみません。私も細かいのを持っていないのです」と言った。実際は細かいののみならず、紙幣も持ってはいないのだが、嘘はついていない。いずれにせよ、重役に恩を売る(?)貴重な機会を逸したわけである。
その日の夕食と晩酌は、近くにあったサンクスでSuicaを使って購入した。そして、徒歩でホテルに行った。宿泊料は事前にネットで決済しているので問題ない。というわけで、何とか「キャッシュレス出張」の一日目を終えることができた。
二日目の朝、歩いてホテルに行く。コンビニで朝食を買い、再び仕事場に入った。主な仕事はPCの設置と設定なのだが、昼時になり、部品の故障や不足が発生した。そこで、近くの家電量販店に行ってクレジットカードを用いて購入した。
朝が早かった事もあり、腹が減ってきた。大阪の真ん中なので、たこ焼き屋やお好み焼き屋、うどん屋などがいくつもある。しかし、いずれも現金がなければ食べることができない。
そうやって歩いているうちに、松屋が目に入った。関東の松屋はSuicaが使えるから、大阪の松屋ならICOCAが使えるだろうと思い、入って食券販売機を見た。すると予想通りICOCAのタッチパネルがあった。
というわけで、大阪まで行って松屋の牛めしを食べる事になった。食べながら、「幕張本郷店の味と同じだな。やはり全国で味が統一されているのだろうか」などと思った。
そして夕方に仕事が終わり、帰路につくことになった。普通なら難波から新大阪まで御堂筋線で行き、新幹線に乗換えるところである。しかしながら、昨日二回地下鉄に乗ったため、プリペイドカードの残額は200円になっていた。したがって新大阪に出るには70円、梅田に出るには30円不足する。
そのため、代替経路を調べる事になった。その中に、JR難波から関西線に乗り、そこから大阪環状線を経由して大阪に出る、という方法が出てきた。これなら、プリペイドカードを使わずにすむ。
本稿を書く際に改めて調べてみたところ、近鉄で鶴橋に出るか、阪神で西九条に出ればぴったり200円ですむうえに所要時間も短縮できていた事がわかった。
もちろん、その時点でもそのような経路がある事は知ってはいた。しかし、一日半ほど「所持現金ゼロ」生活をしている間、「少しでも金を使いたくない」という感覚が染み付き、そこまで頭が回らなくなっていた。そのため、極めて大回りながら最安値である関西線−環状線経由を選んでしまったわけだ。
JR難波駅まで歩いた時間を含めると、新大阪に着くまで40分くらいかかった。その間、二回乗り換えている。御堂筋線に乗れば乗り換えなしの15分で済むところである。たった70円足りないため、そのような目にあったわけである。
ただ、在来線の新大阪駅のホームには立ち食い蕎麦屋があった。JR構内のため、ICOCAが使える。そこで、関西うどんを食べる事ができた。
もし、プリペイドカードの残額が270円だったら、このうどんを食べる事はできなかった。したがって、二日間で一度も関西らしい物を食べることができなかったわけだ。それについては、不幸中の幸いだったと思うことにした。
というわけで何とか、現金を一円も使わずに一泊二日の関西出張を終えることができた。
調べたところ、松屋とローソンでSuicaが使えるようになったのは2009年、JR東海の売店とサンクスで使えるようになったのは2010年とのことだった。したがって、三年前だったらこんな「キャッシュレス出張」はできなかったわけである。
電子マネーの便利さに関心するとともに、現金がない生活の不便さおよび不安さを痛感させられた、貴重な一泊二日の出張だった。