相模鉄道いずみ野線

2011/7/18

 ある用事で東戸塚に行くことになった。しかし、滞在予定時間は15分程度しかない。
 往復2時間以上かけて15分で帰るのも空しいと思っていたら、ふと近くを走っている相鉄いずみ野線と、それに接続する横浜市営地下鉄の戸塚−湘南台間が未乗である事を思い出した。
 そこで、予定より1時間ほど早く家を出て、乗ってみることにした。

 まず横浜に出て、相鉄本線の急行に乗る。これに乗ったのは約20年ぶりだ。土曜の夕方だったが、買い物帰りの客でかなり混んでいた。沿線は普通の住宅街だが、横浜らしく、小高い丘が見えた。また、横浜駅付近を流れている帷子川という川にずっと沿って走っていた。
 そして川が見えなくなると、なぜか「二俣川」という駅に停車した。地図を見ても、それらしき名前の川はない。ここが、いずみ野線の分岐駅である。
 向いのホームには、今まで乗っていた急行と同じ型の車両が止まっていた。ほとんど客が乗っておらず、一見始発列車のように見える。しかし、実際はこれまで乗った急行の11分前に横浜を出た普通電車だ。
 そして、この二俣川で6分停車して、いずみ野線に入るのだ。ただし、乗客のほとんどは急行から乗り換えた人だった。二俣川を通して乗る人はあまりいないように思えた。

 二俣川を出てしばらくすると、本線を跨いで左折し、しばらくしたら新幹線の線路を見えた。それをくぐると、南万騎が原駅に着いた。「みなみまきがはら」という、やや難読な駅名だ。なんでも、「万騎が原」という古戦場の南にあるからこの名前になったそうだ。
 南万騎が原を出ると、すぐにトンネルに入る。それを出るとすぐに緑園都市駅に着いた。「都市」という名前がついているが、別に高層ビルが立ち並んでいるわけではない。似たような形の建売住宅が並んでいた。
 そして、駅を出ると野球場二面にテニスコートという、かなり広い運動施設が見えた。ますます「都市」に似つかわしくない、などと思った。
 続いて到着した弥生台駅は、切り通しにある駅だ。その「壁」にあたる部分が緑化されているのは珍しいと思った。
 再びトンネルに入り、出ると二面四線の、いずみ野駅についた。開業当初はここが終点だったとはいえ、二面四線は似つかわしくない。いずみ野線には現在、快速も走っているが、いずみ野線内は各駅に停車する。また、いずみ野駅折り返しの電車も現在は朝に一本あるだけだ。
 したがって、この二面四線がそのフル稼働した事は1976年の開業以来35年間、一度もないと思われる。いずみ野線には延長構想があるそうだが、それが実現したら、いずみ野線を通過する列車が設定され、ここで追い越しが行われるのだろうか。それが実現するのはいつだろうか、などと思った。
 いずみ野駅を過ぎると、車窓に畑が見えるようになった。そして、いずみ中央駅に着く。ここは、1990年に、いずみ野から延伸され、それから9年間は終着駅だった。
 余談だが、二年後の1992年には仙台市営地下鉄の泉中央駅が、1995年には泉北高速鉄道の和泉中央駅が、いずれも同様に「従来の終着駅からひと駅だけ延伸」という形で開業している。5年間で三つもの「いずみちゅうおう」駅が同じ形態で誕生したわけだ。偶然とはいえ、面白い話である。
 閑話休題。いずみ中央駅を過ぎると、沿線風景の農地率はさらに高まる。横浜市にもこのような田園の中を走る鉄道があったのか、と少々驚いた。続いて停車した、ゆめが丘駅は、かなり奇抜な作りだ。高架駅がプラスチックのドームみたいなもので覆われており、その支柱として、青い鉄骨が用いられている。なんか、恐竜の化石を青く塗った、という感じだった。そして、駅前にはとうもろこし畑が広がっていた。
 この駅を出てしばらくすると、左側から奇妙な建築物が接近してきた。高架なのだが、道路にしては狭すぎる。そして鉄道にしては架線がない。こんな所に非電化の路線があるわけない。一体、なんだろうか、と思っているうちにトンネルに入り、そのまま終点である湘南台駅に着いた。
 ここからは、同じく湘南台を終点としている横浜市営地下鉄に乗り換えて戸塚に行く予定だ。改札を出ると駅周辺地図がある。それによると、いずみ野線と市営地下鉄は同じトンネルを利用しているとの事だった。しかしながら、市営地下鉄の改札は見当たらない。
 詳細案内を見たところ、小田急の湘南台駅を中心として、西口に相鉄のホームが、東口に地下鉄のホームが設置されている、との事だった。駅の西口と東口の双方に配慮した結果なのだろうか。いずれにせよ、乗り換える人は大変だな、と思った。
 そして、少なからぬ距離を歩き、市営地下鉄に乗り換える。発車してしばらくすると、地上に出た。そして、車窓風景には見覚えがあり、さらに左側には先ほど乗っていた、いずみ野線の高架が見えた。
 つまり、ゆめが丘駅を出て見えたのは、市営地下鉄の高架だったのだ。後で見たところ、市営地下鉄は線路脇の架線から電力を得る「第三軌条方式」だった。それゆえ、架線が見えなかったのだ。
 そんな事を思っているうちに、相鉄線の高架と別れ、すぐに下飯田駅に停車した。後で調べたところ、この駅は、ゆめが丘駅の近くにあった。したがって、いずみ野線と地下鉄を乗り換える人はここを利用するのだろう。だから、湘南台駅での乗り換えの不便さにクレームが出ないのだろうか、などと思った。