千葉市最北端の謎

2015/5/6

 筆者の住む千葉市花見川区は、千葉市の西北にある、ブーツのような形をした区である。
 この地図で四角で囲った北端の部分は千葉市の北端でもあるのだが、よく見ると、ちょっと奇妙な形になっている。

 このあたりは、京成本線が花見川区と八千代市の境界線となっている。ところが、その北端部だけ、ちょっとだけ京成本線を超えて、八千代市の市域に入っているのだ。
 さらに、この部分をグーグルマップで拡大すると、不可解な事に気づく。
 京成本線を越えた部分の八千代市との境界が、異様に入り組んでいるのだ。ちょっと見ただけでは、どこが花見川区で、どこが八千代市かわからない。

 一方、ヤフーやマピオンの地図では、この一帯の七軒が花見川区という事になっている。

いったい、どちらが本当なのだろうか。
 百聞は一見に如かず、という事で、実際に現地に行ってみることにした。

 気軽に「現地に行ってみる」などと書いたが、筆者の住む幕張本郷は花見川区の西端にあり、この謎の境界線を持つ横戸町は花見川区の北端だ。したがって、行くにはそこそこ時間がかかる。
 まず、京成幕張本郷駅から京成津田沼に出る。その際、いったん花見川区を出て習志野市に入った。
 さらに、京成津田沼から京成本線に乗り換えるのだが、実籾を過ぎると一度花見川区に戻る。それから八千代市に入り、2つ目の京成大和田で降りる。
 そこから歩いて花見川区の最北端に向かった。
 つまり、花見川区の西端から北端に行くのに、合わせて4回も花見川区境を超えるわけだ。
 京成大和田駅を出た後、線路沿いに進む。しばらくあると、目的地の一角にたどりついた。
 実際にそのブロックを歩くと、グーグルマップが正しくて、ヤフーやマピオンの境界線が間違っている事はすぐにわかった。そちらの地図で「花見川区」となっている家の一部は玄関に住所が記載されていたのだが、「八千代市大和田」もしくは「八千代市村上」と書かれていたのだ。

 しかし、一軒だけ違う家があった。上の地図で青く塗ったXさんの家である。
 郵便受けに住所シールが貼ってあったが、はがれている。ただ、その跡にはしっかりと「千葉市花見川区横戸町」と書いてあった。
 改めて、グーグルマップの入り組んだ境界線を見ると、要はこのXさんの家だけが千葉市花見川区で、あとは八千代市である事が分かる。
 境界線を正直に読むと、道路の一部も花見川区所属という事になる。しかしながら、道路のその部分が破損したら、八千代市でなく、千葉市が修理するとは考えづらい。
 実質的には、Xさんの家だけが、八千代市の中にある花見川区の飛び地、というわけなのだろう。ただ、線路を挟んですぐに花見川区があるので、「飛び地」という形にせず、無理やり境界線を伸ばして、地続きという設定にしたのだろう。
 おそらくは、Xさんのご先祖が、線路の南側に土地を持つ地主だったのだろう。それゆえに、Xさんの自宅だけは千葉市花見川区になった、と推察される。そうしないと、家の固定資産税は八千代市で、土地の固定資産税は千葉市に納める、という事になってしまう。これは、本人にとっても役所にとっても好ましいことではないだろう。
 あと、花見川区と八千代市の境界線がえらく入り組んでいるのも謎だ。実質はあくまでも、「このブロックで、Xさんの家だけが花見川区横戸町だ」というだけなのだが…。
 当時、Xさんの家だけを千葉市にする、と決めた際に、担当者が冗談でこんな変な境界線を引いたのだろうか、などとまで思ってしまった。
 いずれにせよ、八千代市の中に、一軒だけ千葉市花見川区に所属する家があったわけだ。それを見た時は、一花見川区民として、不思議な感慨をえることができた。

2020年追記
 久々にグーグルマップを見たら、花見川区の境界線が京成の線路までになっていた。
 該当する家はなくなっていた。
 この家の主が転居し、家を処分した事により、花見川区横戸町である必要がなくなったからだと思われる。
 というわけで、かつての花見川区横戸町の一部は、八千代市村上に編入され、千葉市の面積が数百平米減って、その分、八千代市の面積が増えたわけである。まあ、市役所で働いている人を除けば、だれも気づかないし、誰も困らない話ではあるのだが…。