鷺沼温泉

2003/3/10(2008/2/9追記)

 日帰りで温泉に行こうかと思い、千葉県内の温泉を調べてみた。ほとんどの温泉は房総半島か銚子方面なのだが、その中でなぜか一つ習志野市内に温泉があった。最近は、健康ランドみたいなものを作るのにあわせて、地下深くを掘り、そこから出てきた湯や水を「天然温泉」としているのが首都圏にいくつかある。しかし、この習志野市の「鷺沼温泉」はそういう感じでもない。
 ネットにある情報と地図で調べてみたら、自宅から歩いていける所にあることが判明した。情報によると、湧き水を使った銭湯で、やけに古びた施設という事だった。なかなか味のありそうな所である。
 幕張本郷・JR津田沼から歩いて30分程度、京成津田沼からだと15分と、どこから行っても不便なところにある。
 バスを使うならJR津田沼駅から袖ヶ浦団地行きに乗り、習志野第三中学バス停で下車する。降りたら元の方向に戻り、交差点を右折し、次の交差点を右折してすぐ。歩いて5分くらいで着く。
 また、京成津田沼駅から習志野市コミュニティバス・海浜公園行きに乗り、鷺沼一丁目から2分くらい。新習志野駅からなら、駅から徒歩数分のところにある千葉工大前バス停から同路線に乗り、やはり鷺沼一丁目で下車する形になる。
 電車とバスを乗り継ぐくらいなら、歩いたほうが効率がいいので、徒歩で行くことにした。まず、にんじん畑を抜ける。畑作地帯を抜けた所を右折すると津田沼に行くのだが、そこを直進する。これまで自宅近辺や津田沼方面にある畑は、全て路地栽培だったが、こちらのほうにはビニールハウスもあった。そしてしばらく歩くと国道14号線に出た。
 国道14号線を津田沼方面に向かって少し歩くとピザ屋があった。確かネットの情報で「ピザ屋の角を曲がる」と書いてあったな、と思いそこを曲がる。しかし、温泉の案内はもちろんのこと、銭湯の煙突すら見えかった。しかしそのまま歩くと、煙突が見え、やけに古びた木造の建物が見えた。どうやら、「鷺沼温泉」の裏側に出てしまったようだ。それにしても、木造の壁ははげかけ、植物がからまったりしていて、なんか廃屋みたいな建物だ。
 ネットでの情報だと「15時より営業」となっているが、まだ15分ほど時間があった。そこで近くのセブンイレブンで時間を潰した。セブンイレブンを出ると、なんか狭い道があり、「樋ノ口弁天」という表示がある。入ってみると小さい池と鳥居があった。説明書を読むと、以前はこの辺までが海岸線で、このあたりに水が湧いたので、弁財天を祀った」みたいな事が書いてあった。その湧き水を温泉にしているのだろうか、などと思った。
 再び14号線に出る。数年前まではT字路だったようだが、新道ができたので、現在は十字路だ。そこを曲がると「鷺沼温泉駐車場」と書かれた看板と車3台分のスペースがあった。その駐車場の裏手は廃材置き場みたいになっている。他の所は普通の住宅街なのだが、なぜか「鷺沼温泉」の周辺だけ古びた雰囲気がかもし出されている、という感じだ。(※現在は隣にこぎれいなアパートが建つなど、周辺は変わりつつある)
 そこから少し歩くと、「温泉」「風呂屋」という看板があった。どうやらネットにあった「ピザ屋」は移設していたようだ。その看板を曲がると、「鷺沼温泉」と書かれた銭湯があった。

 まず、靴をいれようと下足箱を開ける。一応、銭湯によくある木製の鍵つきの下足箱だが、鍵を開けたまま靴が入っている所が多かった。かなり大雑把な利用者が多いらしい。(※現在は、鍵付き(?)は撤去され、開放型の普通の靴棚になっている)
 入ったら番台兼脱衣所だった。385円(※現在は420円)を払って中に入る。「脱衣かご」に服を入れる仕組みとなっており、ロッカーはなかった。初めての経験だったが、ネットで事前に情報を得ていたので、さほど驚かなかった。だが、脱衣所の壁にある棚には驚いた。棚には洗面器・タオル・石鹸などが数多く置かれている。どうやら、常連客が風呂道具を置いてあるようだ。また、脱衣所の片隅には高さ150cmくらいの古びた扉があり、「トイレ」と書かれている。プレートなどはなく、手書きだ。なお、扉などは数十年前くらいに作られた感じの木造のものだったが、トイレそのものは普通だった。
 風呂場の入口のガラス戸にいろいろな案内が書かれている。すべてカレンダーの裏側にマジックで書かれていた。一番目立ったのが「盗難が発生しましたので、お手回り品にはご注意ください。大量の現金は持たず、貴重品は番台にお預けください」という表示だった。時代から取り残されたような脱衣所だが、やはり世知辛くなっているのだな、と思った。
 また、営業時間変更と休業日の案内もあった。「これまで14時営業開始だったが、今月から15時営業開始になる」との事だった。ネットでの情報だと「15時半から」となっているところが多かったところを見ると、どうやらしょっちゅう営業時間が変わっているようだ。
 また、休みの日も特に規則性がなかった。ネットには「毎週月曜日」とか「4日・14日・24日が休み」と書いてあったが、これも思いつきで変わるようだ。営業時間も営業日も電話(047−452−2523)で確認するよりない。

 脱衣所はあらゆる意味で衝撃的だったが、中は普通の銭湯だった。湯船の壁には「湖から見る富士山」みたいな絵が描かれていたようだが、超ド近眼の筆者にはよくわからなかった。
 湯船は二つあり、向かって右側は低温で浅く、左側は高温で深い。お湯は黒褐色で、透明度は低い。左側の深い湯船に入ろうとしたら、底が見えなかったので、ちょっと怖かった。
 湯船のところに効能が書いてあった。とりあえず、普通の温泉にあるような効能は一通り揃っているようだ。普通、温泉の説明というと、「○○保健所・××」と調査員の名が書かれ、「適応症がこれこれで、禁忌症はこれこれ」と書かれた「証明書」みたいなものがあるとしたものだが、ここにはなかった。
 また、二つの湯船の境目には水道とコップがあった。コップに源泉を出してみたら、黒っぽい水が出てきた。温度はぬるま湯と水の中間くらい、という感じだった。味は特に感じなかった。(※この前行ったらコップが撤去されていた。後で入口のところを見たら、「保健所の指導により、湯・水の飲用はしないでください」という張り紙があった)
 「温泉情緒」のかけらもない「温泉」ではあるが、脱衣所の雰囲気もふくめ、何とも言えない趣きがあった。またそのうち機会があったら行ってみたいものである。