ゆうゆう亭にバスで行く

2012/1/29

 Jリーグに所属している愛媛FCは、もともとマスコットが特徴的な事で知られていた。「オ〜レくん」「たま媛ちゃん」「伊予柑太」という三人組で、いずれも愛媛の名産品である蜜柑をモデルにしている。
 このように書くと普通のマスコットみたいだが、実際に見ると、通常のマスコットとはかなりずれている。(参考ページ)
 マスコットというからには親しみやすい外見であるのが普通だ。確かに、女性キャラである「たま媛ちゃん」は可愛い造形になっている。しかし、メインマスコットである「オ〜レくん」はギラギラした目にむき出しの歯と、「可愛らしさ」とはかなりずれた造形だ。さらに、第三のマスコットとも言える「伊予柑太」に至っては、凶悪犯と言っても過言でないような外見をしている。
 さらに「たま媛ちゃん」を含む三人とも、口の端にオレンジ色の汁をつけているのにも驚かされる。蜜柑の果汁を意識しての事だと思うが、普通に見ればこれは「よだれ」だ。「口からよだれを垂らしている凶悪犯みたいな顔をした蜜柑キャラ」などと書くと、どこが「マスコット」なのだ、とも思えてしまう。
 それだけインパクトの強い愛媛FCのマスコットに、2009年よりさらに強力なキャラが加わった。それは、愛媛FCの本拠地であるニンジニアスタジアムの近くで営業している、愛媛の郷土料理店「ゆうゆう亭」のマスコットキャラ「一平くん」である。
 愛媛FCの試合前に行われた、愛媛県で活躍しているマスコットを集めた「ゆるキャラ徒競走大会」に出場した彼は、走っている途中に転んで担架で運ばれる、というパフォーマンスを演じた。
 その担架での運ばれっぷりが、サッカー情報サイトJ's GOALに掲載されたのがきっかけで、一平くんの知名度は急上昇した。そのため、ホームのみならず、関東や九州にまで遠征し、その「担架芸」を披露した。その迫真ぶりは、実際に見た人やネットで動画を見た人が、「中の人」が倒れたかと本気で心配したほどである。
 また、昨年秋には、先述した「伊予柑太」をセコンドに従えて川崎フロンターレのマスコットとボクシングで対戦した。そして、見事KOされ、得意の担架で退場している。
 そして、2011年には愛媛FCより「一平くん人形」が販売されたが、初回・二度目とも即日完売になったほどの人気ぶりなのだ。

 それだけに、「一平くん」および「ゆうゆう亭」には強い関心があった。「一平くん人形」も我が家には二体あるほどである。その我が家では、年に一度、松山にある相方の実家へ行っている。せっかくだから、その際に「一平くん」の本拠地である「ゆうゆう亭」に行こうと考えた。
 車で行けばさほど時間はかからない。しかし、筆者は免許を持っていないし、相方もブランクが長く、運転するのは難しい。したがって、公共交通機関で行くよりない。
 しかしながら、店舗紹介サイトにあるアクセス情報や利用者の体験談を見ても、自動車で行く方法しか書いていない。唯一あった公共交通機関に関する情報は「北伊予駅から3,691m」というものだった。さすがに、駅から4キロ近くを往復する気力はおきない。
 というわけで諦めかけていたのだが、ある日、地図サイトで周囲を見ていたところ、店からちょっと離れた道にバス停の表記がある事に気づいた。ざっと見た感じだが1キロも離れていない。そこで、そのバス停を使って行ってみることにした。

 松山の中心部である伊予鉄道松山市駅から、「えひめこどもの城」行・「大岩口」行・「断層前」行のいずれかのバスに乗る。日中の一部を除き、バスは市内中心部をほぼ一周してから目的地へ進路を変える。そのため、発車して10個目のバス停に着くと、松山市駅の駅舎が再び目に入ってくる。
 続いて、石手川を渡る。筆者が行った時は水が一切流れていなかったが、相方によると別に珍しい事ではないらしい。しばらくすると、伊予鉄道横河原線が見え、伊予立花駅に着いた。
 この駅からは、かつて伊予鉄道森松線という路線が分岐していたが、1965年に廃止された。バスはその跡地に沿って進む。
 次のバス停の前にはイオンがあり、そこを過ぎて交差点を越えると、道幅が広くなった。途中、伊豫豆比古命神社という表示があった。なんでも、この神社では「椿まつり」という大規模な祭りがあり、その期間中、このあたりは大渋滞になるのだそうだ。
 さらに進むと、道が分岐し、バスは狭い道に入った。この道は、松山と高知を結ぶ国道33号線で、広い道のほうはバイパスとして建設されたそうだ。広いほうを進んでくれると、目的地である「ゆうゆう亭」に着くのだが・・・と思った。
 しばらくすると、森松というバス停についた。かつては廃止された森松線の終点である森松駅があったところだ。その駅跡地を営業所として利用しており、ここで運転手の交代があった。周辺には商店がかなりあり、さすがはかつての終着駅前、という感じだった。
 さらに進むと、大きな橋で重信川を渡った。かなり長い橋だが、この川も水はほとんど流れていない。ただし、相方の話によると、大雨の時は、その広い河川敷が水で埋まるとのことだった。
 橋を渡ってしばらくすると、麻生というバス停に着いた。ここが「ゆうゆう亭」の最寄りだ。松山市駅前からの運賃は450円だった。

 降りて進行方向に少し直進すると、小さい床屋がある。ここで左折して細い道に入る。
 沿道には住宅とともに蜜柑畑がいくつかあり、愛媛らしさを感じさせられた。そのまま道なりに真っ直ぐ進むと橋がある。このあたりもWiMAXの範囲内となっており、iPod touchの地図で現在地を確認することができた。
 そして、橋を渡ってしばらく進むと、先程分岐したバイパスが見え、その向こうには「ゆうゆう亭」があった。

 ただ、見えはするものの、道には横断歩道もなく、渡るのに苦労した。それもあって、「ゆうゆう亭」にたどり着いた時は、ちょっとした達成感があった。
 店は農家をモチーフとしており、「土間」の部分にドリンクバーとおでんバーが設置されていた。残念ながら、我々が行った日にはお目当ての「一平くん」は店にはいなかった。
 そして座敷に上がってランチメニューを見て店の看板商品である、蕎麦並に細い「もち麦うどん」をメインにしたセットを頼む。ご飯は鯛めしととろろご飯があったので、1つずつ注文して相方と分けて食べた。他に、ざんぎ(鳥の唐揚げ)とじゃこカツも注文した。
 注文した後にメインのメニューを見たが、なぜか冒頭に愛媛県歌が記載されていた。よく見ると、紙おしぼりの袋にも県歌が印刷されている。
 郷土料理を売りにしている店は沢山あるが、ここまで「県歌」を前面に押し出している店はそうはないだろう。
 さらに、メニューを見ていると、いろいろとユニークな料理があった。鍬の形をした鉄板に乗って出てくる「くわ焼き」や、丸くない「だんご」を用いた、だんご汁など、印象に残るものが多い、
 その中で、一番印象に残ったのは、「えびまつり」というメニューだった。これは、天ぷらうどん、もしくは天丼において、乗せる海老の天ぷらを1本から20本まで自由に選べる、というものだ。「最終形態」である海老の天ぷらが20本乗った写真も掲載されていたが、それはもはや、「天ぷらうどん」とは異なる謎の物体、という感じだった。

 そのようにメニューを見ているうちに、料理が来た。じゃこカツは、二つがセットになって、片方にはソースがかかり、もう片方には大根おろしが乗っていた。
 メインとして出たもち麦うどんの独特の食感や、初めて食べた愛媛名物の鯛めしも美味だった。お目当ての「一平くん」に会えなかった事が気にならなくなったほどの味だった。
 これだけ美味しいのなら、メニューに載った他の料理も美味しいのだろうと思った。それも機会があったら食べたいものだ。しかしながら、往復に費やした時間とお金を考えると、そう何度も行ける所ではない。
 ぜひとも「一平くん」と一緒に店そのものの人気を向上させて、松山の中心部に支店を出してほしいものだと思った。そうなれば、里帰りのたびに行くことにするのだが、なとど思いながら店を後にし、再びバスで市内に戻った。