伊予鉄道市内電車本町線

 嫁さんの故郷である愛媛県松山市は市内電車(路面電車)が市内公共交通の中心を担っている。国鉄が伸びてくるまでの「松山駅」であり、現在も実質的な市の中心駅である伊予鉄道松山市駅を起点にJR松山駅を経由して市内を一周する環状線と、その環状線から分岐する形で有名観光地である道後温泉に行く線で主として構成されている。道後温泉からは松山市駅・JR松山駅行きが交互に発車しており、運転頻度も相当高い。
 ちなみに松山市から内回りで環状線を走るのが1番、外回りが2番、松山市駅−道後温泉が3番、JR松山駅−道後温泉が5番である。そして6番が本稿の「主役」である本町線だ。(路線図
 道後温泉から松山市駅の手前にある「南堀端」までは3番・5番と同じルートだ。そこで松山市駅には行かず、JR松山駅行と同じ路を進む。しかし次の「西堀端」で今度はJR松山駅行きと分かれて90度曲がり、「本町六丁目」を目指すのだ。
 東京になぞらえるなら、東京駅のすぐそこまできながら東京駅に行かずに新宿方面へ直進し、なおかつ新宿の手前で曲がって千駄ケ谷に行くような感じだろうか。

 先日嫁さんの帰省につきあったとき、松山市内を散歩した。そして適当に堀端を歩いていたら、本町線の「本町三丁目」の電停のある所に出た。そこで思いつきで本町線に乗ってみた。本町と呼ばれる町を進むわけだが、別に本町といっても市の中心部ではない。確かに沿線にはチサンホテルなどもあるが、「中心からちょっとはずれた地域」でしかない。ちなみに西堀端からは単線で、途中に交換設備もない。その事情もあり、他の路線は日中10分間隔で運行されているが本町線だけは20分間隔である。
 終点で環状線との接続駅でもある「本町六丁目」もとりたてて何かがあるわけではない。このあたりの環状線は専用軌道であり、本町線の走っている国道には踏み切りがある。本町線の軌道は踏み切りの直前で終わり、アスファルトに埋まるような形で終わっている。それを見た嫁さんは「『線路は続くよどこまでも』という歌があるけど、この線は続いていないね」と妙に感心していた。
 ちなみに嫁さんの実家は「本町六丁目」の隣の「木屋町」という電停が最寄駅となっている。この二つの駅間は短く、「木屋町」で乗り損ねた場合、「本町六丁目」まで走ると間に合う事もあったらしい。いわば凖最寄駅というわけだが、「本町線に乗るのは二度目か三度目」とのことだった。