幕張本郷駅の隣は津田沼駅である。ちょっと駅間は離れてはいるが、それでも電車での所要時間は約3分だ。この両駅間を結ぶバス路線が本稿の主役である。
津田沼駅は幕張本郷駅の北西にある。ところがこのバス、幕張本郷駅を出てまず北東に向かい、最初の交差点を南東方向に曲がるのだ。つまり、津田沼駅と正反対に向かって進むのである。
まあ、南東方向へ向かうのはほんの一瞬なのだが、その後も津田沼駅と90度くらい違う方角に進み、住宅街の中の二車線の道を進みながら、幕張本郷駅のほぼ真北にある京成大久保駅に着く。この、京成大久保駅から津田沼駅もさほど離れてはいない。京成大久保駅を渡ってちょっと行くと大久保十字路というバス停があり、そこから西へ向かえば津田沼駅までほぼ直線で行く事ができる。
ところが、このバスはまたもや目的地に向かわない。津田沼方面へ向かって60度ほど南西に進むのだ。こちらも二車線の住宅街である。なお、この大久保駅近辺で左側は窪地になっている。バスはちょうどその窪地のヘリを走っている感じだ。
そして、幕張本郷駅から13個目のバス停である鷺沼台三丁目を過ぎると陸橋を渡る。その下を走るのは総武線と京成千葉線。そして進行方向左側を見ると、出発点である幕張本郷駅がはっきり見えるのだ。ちなみに、幕張本郷駅から鷺沼台三丁目までは歩いても15分くらい。バスとさほど変わらない。
陸橋を渡った後は、津田沼方向に曲がり、習志野市役所・京成津田沼駅を経て津田沼駅の南口に到着する。幕張本郷駅を出たときは、北東方向を目指して進んでいたのに、津田沼駅にはほぼ真南から入ってくるのだ。
もちろん、鉄道の隣接する二駅を結ぶバスの基本的な目的は、沿線に住む人をそれぞれの駅まで運ぶ事であり、駅間を最短距離で結ぶ事ではない。したがって、ある程度大回りをするのは当然ではある。とはいえ、いきなり目的地とほぼ正反対の方向に進む、というのはかなり面白い。
また、バス停の名前が単純で面白い。京成大久保駅付近には「保健所」「三叉路」「郵便局」など素っ気のない名前のバス停が並んでいる。また、総武線を渡る手前には「鷺沼台4丁目入口」というバス停がある。「○○駅入口」ならわかるが、「4丁目入口」というのは珍しい。他につけるべき施設や建物や地名がなく、苦肉の策でつけた、という感じだ。
もちろん、幕張本郷から津田沼に行くには全くもって適していない路線だ。料金も電車の3倍くらいかかる。しかし、一度くらい両駅間をこのバスで乗りとおした時は面白かった。予想だにしない進行方向に、面白いバス停名。そして沿線風景も平凡な住宅街ながら、なかなか味わい深いものだったからだ。