ぽんとこしょ
 日本の昔話に、「よいしょ」というのがある。内容はこんな感じだ。
 ある子供が母親に、「親戚の家までぼたもちを取りにいきなさい」と言われる。そこで、「ぼたもち、ぼたもち」と言いながら歩いていくが、途中で小川を「よいしょ」というかけごえで飛び越す。そのまま、「よいしょ、よいしょ、と言いながら親戚の家に行く。
 そして「よいしょを取りに来ました」と言うのだ。当然ながら、先方は「そんなものはない」と言う、すると怒った主人公がその親戚を小突くのだ。するとその親戚は「まあ、なんてひどい子供だろう、まるでぼたもちみたいなコブができてしまった」と怒る。それを聞いた主人公は自分が取りにきたものの正しい名前を思い出す、

 筆者の母親も、これを寝物語に聞いていたそうだ。その際、主人公の掛け声は「よいしょ」ではなくて「ぽんとこしょ」であった。
 ウチの母はその話を子供(つまり筆者)に伝える時、なぜか主人公の名前まで「ぽんとこしょ」とし、さらに内容も現代風にアレンジした。
 「ぽんとこしょ」の行くところは親戚の家でなく近所のスーパーとなり、買ってくるものも日用品や玩具となった。そして途中で飛び越えるものも小川ではなく、街中にある色々なものになった。母親としては、こうしておけば、細部設定の変更だけで、同じ話を何度もできる、という考えもあったのだろう。

 それから10年くらいたって、17歳年下の弟ができた。そのくらい離れていると、親代わりに寝かしつけるような機会も生じる。そういう時はやはり自分がしてもらったように「ぽんとこしょ」の話をするのは、まあ自然な流れであると言えよう。もちろん、その際に可変部分は自分なりにアレンジしてみた。おそらく、「民間伝承」というものはこのような形で口伝されていったのであろう。
 いまでも、中学生になった弟に冗談で「ぽんとこしょ」の話をしろと言われる。こちらも「ある日、ぽんとこしょはお母さんに『ミニ四駆を買ってきなさい』と言われ・・・すると途中に大きなポケモンがいたので、『ぽんとこしょ!』と飛び越え・・・」などと流行を取り入れて(?)話している。