真田剣流(白土三平氏)

2003/07/02

1960年代くらいらしい
 筆者が小学校低学年の頃に読んだ漫画に、「ドラえもん」「ドカベン」「ブラックジャック」「ブッダ」「あしたのジョー」があった。最初の2作は親が買ってくれたもの。後は親や親戚が持っていたものだ。まあ、このへんは無難だろう。しかし、それらに混ざって家にあった本作「真田剣流」はかなり毛色の変わった作品だった。
 基本的なストーリーは、「丑三の術」なる謎の術で祖父を殺された少女・桔梗がその敵を討つために、丑三の術について書かれた巻物と、謎の怪人「暗夜軒」を追う、というものである。この暗夜軒という男、髪の毛とヒゲがつながって一体化している。なかなかユニークな顔だが、彼の呪いの藁人形を見たが最期、呪われた人は原因不明の病で死んでいくのだ。
 その「丑三の術」の謎解きを軸に、やけに色々な人物が出てくる。忍者系では風魔小太郎に、その後継者風魔太郎に服部半蔵。「真田剣流」なだけあって、真田忍軍もいろいろ出てきた。猿飛佐助に至っては、「木猿」「土猿」「火猿」みたいな感じで増殖していた。中には抜け忍になり、顔を変えて風間一族の乗っ取りを図った異端児までいた。
 さらに若き日の宮本武蔵まで出てきて、額に乗せた米粒だけを切って人間にはキズ一つない「太刀先の見切り」なる技を披露したり、戦いの中で偶然二刀流を編み出したりしていた。もっとも、筆者の記憶の限りでは、宮本武蔵は話の筋には全然関係していないのだが。

 さて、肝心の暗夜軒の「丑三の術」だが、猿飛一族の「木猿」が、「その正体は催眠暗示」と決め打ち、さらに暗夜軒の弱点までつかみ、退治に行く。しかし、「催眠暗示」は術の半分でしかなく、「丑三の術」の前に返り討ちにあう。
 一方、桔梗は父を探す少年「コッパ」と謎の少年「太郎」と旅を続ける。その「太郎」が巻物を入手して解いた。なんと、「丑三の術」の正体は、ダニの仲間のツツガムシによる病気だったのだ。つまり、暗夜軒はツツガムシを採取し、それを藁人形とともに、敵の家に放っていたのだった。
 太郎の解説によると、ツツガムシ病は飛鳥時代からの歴史があるらしい。聖徳太子が隋の皇帝に送った手紙「日出ところの天子、書を日没するところの天子に致す。つつがなきや」 の「つつがなきや」は「ツツガムシはいないか?」という意味なのだそうな。このくだりのおかげで、本作は筆者の記憶に焼き付いた。
 いずれにせよ、謎を解いた太郎の前に暗夜軒は最早敵でなかった。ツツガムシの採取場所での決戦は、両者とも地に足をつけないために竹馬に乗っての闘いとなった。仕方がないとはいえ、はたから見るとかなり間抜けな戦闘シーンである。
 さらに暗夜軒は竹馬に加え、ツツガムシよけの油を体に塗っていた。それを知っていた太郎は、「火遁の術」を使う。それにより、暗夜軒は燃え尽き、決着はついた。
 他にも色々とゴチャゴチャした人間関係があったりするのだが、とにもかくにも、両者が竹馬に乗って闘う決戦シーンと、「ツツガムシは聖徳太子の手紙にも出てくる」という民明書房を20年ほど先取りした解説は、今でもよく覚えている。


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