聖剣ジステンパー

 魔法で石にされた「王女・クラミジア」を救うために、若き勇者が魔物に挑む話である。魔物である怪龍を倒すためには「聖剣ジステンパー」が必要だ。それを得るために、聖なる杯とクシを見つけ、女神の力によって聖剣を得て、最期には敵を倒す、という筋立てだ。
 こうやって書くと、どこにでもありそうな「剣と魔法」モノみたいだ。そして、それをギャグ作家である安永先生が描くのだから、それのパロディである事は最初から分かってはいた。しかしながら、その内容は、想像を絶していた。
 主人公は仲間を集めて旅に出るが、その面子が、生臭坊主・暴力団員・キャバクラ嬢という取り合わせなのだ。それだけでも異様だが、この「パーティ」の行動も異様だ。なんと、城壁を出る前に、まず、おでん屋に入るのである。カタカナ名前(実際は病気の名前だが)の城郭内に、おでん屋があること自体が不可解だが、これまた、そこから繰り広げられる本編に比べれば驚くほどではない。
 店では、人の良さそうな主人が、おでんを煮ている。そんな中、牛すじ串だかを頼むと、それにアイスの当たりよろしく、「ジステンパーの串」と書いてあるのだ。続いて、酒を飲むと、その杯には「ジステンパーの聖杯」と書かれている。あっという間にアイテムが揃うのだ。
 すると、人の良さそうだった、主人の表情が一変する。なんと、彼の正体は、諸悪の根源だった怪龍だったのだ。すると仲間の一人、生臭坊主も変身する。彼の正体は女神だったのだ。もっとも、服装は女神になったものの、顔は生臭坊主のままだが・・・。いずれにせよ、これで主要キャラも揃ってしまった。
 そして、女神が主人公に強引にキスすると、力が発動し、「聖剣ジステンパー」が登場する。といっても、先ほどの串が刀身に、杯がツバになっただけだが・・・。
 ところが、その聖剣が、怪龍の額を突き刺し、あっという間に闘いが終わるのだ。パーティーを結成してから1時間も経っていない。歩いた距離も1キロ未満だ。
 安直さを極めながら、想像を絶する展開が連発されている事が、非常に心に残った作品である。