増刊サンデー連載の県立地球防衛軍がヒットした作者が、週刊少年サンデーに進出し1985年秋から「陸軍中野予備校」という作品を連載した。しかし、この作品は作者独自のギャグセンスは随所で光っているものの、基本的なプロットが「多彩な変態を擁する謎の悪の組織と、高校生主体で構成されたこれまた謎の組織が戦う」という「防衛軍」の焼き直しみたいな感じだった。もちろん、昔からギャグ漫画が冴えないサンデーの中では群を抜いたレベルとは言えるが、やはり前作と比較すると粗が目立った。
実際、作者も疲れていたような感じで、後半になると「蟹の大安売りが行われて大量に購入したのはいいが、どう処分すればいいかと困る」などという話で一話もたせたりしていた。そして連載のほうは1年と10週ほどで終了した。
ここまでだと、単にちょっと冴えない作品なのだが、連載終了後、この作品は奇妙な運命に見舞われる。
連載中は他の作品と同じペースで単行本が3巻まで出ていた。普通なら連載終了後も2ヶ月に1冊くらいのペースで最終回まで出すとしたものだが、この作品に限ってはなぜかピタッと止まってしまったのだ。別にどこぞのジャンプ漫画のように作者が事件を起こして回収されたわけではない。雑誌や他の単行本の「コミック一覧」には「1〜3巻発売中」と表示がされたまま1年以上過ぎた。連載終了から1年半ほど経った1988年に第4・5巻が出たが、それを最後に「第6巻」の発行は無期延期状態になってしまった。
その後も読みきりやシリーズ物をサンデーやスピリッツ増刊で描いていたが、連載の話はなく、単行本が出る話もなかった。
ところが、瓢箪から駒みたいな感じで状況が一変する。1989年に読み切りとして週刊少年サンデーに描いた巨乳ハンターが大好評で、再登場・集中連載を経て「実写ビデオ化」までされ、増刊サンデーで連載となった。
当然ながら単行本化され、そちらの売り上げも好調だったと推測される。そのおかげで、闇に葬られつつあった「陸軍中野予備校」に再び光が当たった。未収録の連載分では単行本1冊のページ数に満たない、という事で連載終了から約5年を経て読みきり2本が増刊サンデーに掲載され、それを含めた最終第6巻が第5巻から約4年の時を経て発行された。
さて、やけに長い前ふりとなったが、この発行までに波乱万丈の経緯をたどった作品の最終巻のおまけ漫画として描きおろされたのが、この「恐怖読みきり 一休さん」である。
アニメにもなった「とんちの一休さん」は、あらゆる難題を知恵で切り抜ける。しかし、ここでの「一休さん」は正反対で、全てを力技で解決してしまう。
冒頭「このはし渡るべからず」の立て札が橋の前に立っているが、この一休さんは「橋の端を歩く」などという事はしない。立て札が震えるような地響きと「わーははははは」という笑い声をあげながら走ってきた「一休さん」は橋を渡らずに一気に飛び越える。その勢いで将軍様のお屋敷に突入し、屋敷中を荒らしまわったあと、正面から出てくる。なぜか僧衣は全て脱ぎ捨ててふんどし一丁、そして頭には「ふたのされたお吸い物」を乗せ、両手には屏風を持ち、虎を追っているのだ。
そして余りの迫力に逃げる虎を一気に追って正面を突っ切り、先ほどの橋を今度は渡って走り去っていく。残されたのはその際にぶち折られた立札のみだった・・・。
長年、最終巻発行を待ち続けた甲斐があったと思える、衝撃的な「締め」であった。
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