初の週刊連載であった「陸軍中野予備校」が不本意な形で終わったあと、連載と縁がなかった時代の安永先生の作品。
「自分より明らかに優れた才能を持つ若手漫画家・淀橋ガッチャマン(仮名)に嫉妬をした有名漫画家・浅草ポリマー(仮名)が、不当な手段で表現できる場所をつぶした挙句、淀橋ガッチャマン(仮名)を死においやる」というものを、死を目前にした老浅草ポリマー(仮名)の回想、という形で描いてある。言うまでもなく、「アマデウス」のパロディである。
もっとも、当時の筆者は「アマデウス」を見たことがなく、それから数年後、松本幸四郎親子による舞台で「アマデウス」を見る機会を得たとき、「なるほど、ここは『まんがアマデウス』にあったあのシーンの元ネタなんだな」と思いながら観劇していた。
というわけで、元ネタなど知らなくてもこの作品が十分面白いのは、自虐的とも思えるストーリーと、きわめてマニア向けなネタだからだろう。
元ネタのモーツァルトの位置付けになる淀橋ガッチャマン(仮名)の境遇は、初の連載である県立地球防衛軍がヒットした上にOVA化までされながら、次作の「陸軍中野予備校」で単行本も満足に出してもらえなかった筆者を彷彿させられる。 そして落ちぶれた淀橋ガッチャマン(仮名)の所に浅草ポリマー(仮名)が仮面をつけて現れ、最後の作品を作らせる。その依頼とは、「根の暗い病気もちがテーマの同人誌の原稿」なのである。
そして、何食わぬ顔をしてその作品を手伝いに行くのだが、陥れられた事を知らない淀橋ガッチャマン(仮名)が、「先生に来て頂けるなんて感動だなあ」と素直に喜ぶ所が物悲しい。
そして、最後のシーンは「アマデウス」では描かれなかった率直な表現が使われている。回想を終えた老浅草ポリマー(仮名)が、看護人に「思えば、随分とひどいことをしたものだなあ」とつぶやく。すると、看護人は「あんた、最低ですなあ」と言い、老浅草ポリマー(仮名)は「それを言っちゃおしめーよ」と返すのである。
筆者は「アマデウス」を観劇したときの最後のシーンは覚えていないが、この漫画の最後のシーンはよく覚えている。それもやはりこのミもフタもない会話のためなのだろう。
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